政府が推進するカジノの解禁に、国民が不安を抱くのは当然である。家庭崩壊につながるギャンブル依存症が増える懸念が拭えない。

 だが、政府はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の実施法案を27日に閣議決定し、今国会成立を目指す構えである。

 なぜ、そんなに急ぐのか理解できない。

 法案を巡る与党協議では、全国3カ所にIRを開設することで合意した。日本人のカジノ入場料は6千円とし、入場回数を週3回、月10回までに制限する。入場時には、マイナンバーカードで本人確認を行う方式だ。

 安易なカジノの利用を防ぐ措置だが、ギャンブル好きの人に対しては、大きな効果は期待できないだろう。

 しかも、国民の多くはカジノの解禁を望んでいない。共同通信が3月に実施した世論調査では、カジノ解禁には反対が65・1%で、賛成は26・6%にとどまった。

 そもそも、賭博が法律で禁じられている日本で、政府が特例を設けてまでカジノの開設を後押しする必要があるのだろうか。

 これまでのカジノに関する国会での議論は、拙速で不十分なものだったと言える。解禁の是非について、一から論議し直すべきだ。

 安倍政権はIRを、インバウンド(訪日外国人旅行者)を呼び込む「成長戦略の目玉」と位置付ける。

 カジノやホテル、国際会議場、展示場が一体となった複合施設だが、成長戦略には事業の健全性が求められる。

 カジノを巡っては、周辺の教育環境の悪化などを心配する声が尽きない。

 IRを開設するには、都道府県か政令指定都市が事業者とともに整備計画を提出し、国の認定を得る必要がある。

 北海道、大阪、和歌山、長崎の4道府県が誘致に取り組み、ほかにも誘致を検討する動きがある。だが、巨大経済圏で集客力の強い首都圏と関西圏に各1カ所、残りが地方になるとの見方が多い。

 2025年の万博誘致を目指す大阪府は、前年までのIR開業を視野に入れ、働き掛けを強める。

 大阪にカジノができれば、徳島県から足を運ぶ人も少なくあるまい。気をもむ家族もいるのではないか。

 3カ所としたIRの数を、最初の認定から7年経過後に見直すことも問題である。カジノが全国に拡散すれば、どうなるだろう。

 政府の調査によると、ギャンブル依存症の経験が疑われる成人は推計約3・6%、約320万人に上る。

 依存症でなくても、身近な場所にカジノができれば、訪れたくもなろう。経済的破たんを誘発しかねない政策を進めるべきではない。

 与党は、昨年の特別国会に提出されたギャンブル依存症対策基本法案の審議を優先する方針のようだ。丁寧に問題点を掘り下げてもらいたい。