雌牛の子宮の状態を見る獣医師=上板町の県立農林水産総合技術支援センター畜産研究課

 愛媛県内での獣医学部新設計画に関連し、獣医師の数が全国で議論を呼んでいる。徳島県内の現状を取材すると、鳥インフルエンザ対策などで中心的な役割を果たす公務員獣医師が、県の募集定員を5年連続で確保できていないなど、人員不足の常態化が浮かび上がった。県はOBの活用で不足を補ったり、初任給の上乗せで人材確保を図ったりと、苦心が続いている。

 県の獣医師採用は2012年度から定員割れ状態にある。16年度は募集10人に対し3人しか確保できないなど、半数に届かない年もある。

 県は04年度から、それまで年1回だった採用試験を2~4回に増やし、対象年齢を29歳から35歳に、08年度には39歳に引き上げた。また16年度には、基本給に上乗せする「初任給調整手当」を設け、就業から14年間にわたり5万円~3千円を上乗せする制度を創設した。待遇改善を重ねるが、確保には思うようにつながっていない。

 背景には、全国的に獣医学部卒業生の人気が、ペットを診る獣医師に集中している現状が指摘されている。県畜産振興課は「近年のペットブームに伴い、努力次第でもうけにつながる、小動物を扱う開業医を志望する人が増えている」とする。

 確保が計画通りに進まないため、県内の公務員獣医師は減少傾向にある。2000年以降、ピーク時の2003年には115人いたが、17年は96人で19人減少している。

 家畜を診る民間の産業動物獣医師も減っている。東みよし町では09年度に産業獣医師がいなくなり、診察を県西部家畜保健衛生所が行うようになった。

 衛生所は▽伝染病・疾病の検査▽畜産物の生産衛生指導▽乳質改善の指導―などが主な業務。しかし、産業獣医師の減少で西部家畜保健衛生所では去勢手術、人工授精、呼吸器病の治療など、これまで主に民間が行っていた業務が増えた。

 このほか、他の家畜保健衛生所も含め、業務は増加しており、例えば、流産や下痢を防ぐワクチン注射は08年度まで民間が行っていたが、今では年間平均2000件を県が請け負うようになっている。

 人員不足対策としてのOBの活用は03年度に始まり、本年度は5人が獣医師として働いている。畜産技術者が不足する中、県は家畜人工授精師や受精卵移植師などの免許取得を支援する講習会も開いている。

 西部家畜保健衛生所の東城孝良所長は「畜産農家に直ちに影響が出るほど、獣医師は不足しているわけではない。ただ、獣医師の高齢化も進んでいる。畜産技術の継承も不可欠で、将来を見据えて採用していく必要がある」と指摘している。