北朝鮮情勢が慌ただしい動きを見せる中、安倍晋三首相とトランプ米大統領の会談が開かれた。

 6月上旬にも予定されている史上初の米朝首脳会談に向けて政策課題を擦り合わせ、認識を共有することが最大のテーマだった。

 会談でトランプ氏は、拉致問題の解決へ「ベストを尽くす」と明言。核・ミサイルでは、放棄が実現するまで最大限の圧力を維持することで一致した。

 二つの大きな課題に対し、結束を確認できたことは評価できる。トランプ氏と親密な関係を築いてきた安倍首相の対米外交の成果だ。

 ただ、懸念すべき点も少なくない。

 拉致問題への温度差だ。現在、米国人3人が北朝鮮に拘束されている。トランプ氏が成果を急ぐあまり、3人の解放を重視し、拉致問題は議題にしただけで終わってしまわないか。

 核・ミサイルも優先度は違う。米国が最も危険視するのは、核弾頭が搭載可能で米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)である。日本は中・短距離ミサイルの廃棄も重視している。

 日本側の要望が置き去りにされては困る。日本は機会あるごとに、首脳同士で確認しあった政策の実行を訴えてもらいたい。

 残念なのは、日本が北朝鮮との公式対話のルートを確保しておらず、交渉が米国頼みにならざるを得ないことだ。日本外交のいびつさを物語っていよう。

 拉致問題の解決を目指す上で当然、日朝間の首脳会談を見据えなければならない。そのためにも早急に態勢を整える必要がある。

 トランプ氏は会談の中で、ポンペオ中央情報局(CIA)長官が先ごろ訪朝し、極秘に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談したことも明らかにした。米朝会談への準備の一環だろうが、予想外の動きに驚きを隠せない。

 日本も、米国をはじめ韓国や中国と連携を深め、朝鮮半島の平和と安定に向け存在感を示してもらいたい。

 今回の首脳会談のもう一つの主要テーマだった通商問題では、双方の溝が浮き彫りになった。

 安倍首相が環太平洋連携協定(TPP)を重視する姿勢を示したのに対し、トランプ氏は「日本との2国間協定の方が望ましい」との立場を鮮明にした。

 トランプ氏は対日貿易赤字の削減に強い意欲を示しており、新たに日米貿易協議を始めることになった。今後、具体的な要求を突きつけてくることは間違いない。

 最近のトランプ氏は外交や経済担当の主要閣僚を次々と入れ替えており、政策方針が分かりにくくなっている。

 日本は新たな側近たちにどうアプローチしていくのか。対米関係においても高い外交力と、しなやかな交渉力が求められる。