政府が最重要政策に掲げる働き方改革関連法案の今国会成立が見通せなくなってきた。森友、加計(かけ)学園問題や日報隠蔽(いんぺい)問題などの影響で、法案の審議入りのめどが立たないためだ。

 とはいえ、罰則付きの残業時間上限規制や非正規労働者の待遇改善を目指す「同一労働同一賃金」の導入など、働く側にとって画期的な内容が多く含まれている。

 国民生活に深く関わる重要法案である。与野党は真摯(しんし)な議論で結論を見いださなければならない。

 超高齢社会の到来が目前に迫り、人口減は企業の人材不足を深刻化させている。ITや人工知能(AI)の急速な進展を見据えると、誰もが活躍できる労働環境を早急に整えなければ、日本の持続的成長は難しい。

 最大の課題は、先進国で最も低い日本の生産性を向上させることだ。各企業は法案の行く末に関わらず、それぞれの実情に応じた働き方改革を加速させる必要がある。

 残業時間の上限規制に関しては「月45時間、年360時間まで」と定めた上で、月45時間の原則を超える残業は年6回までとした。違反企業には罰則を適用するため、長時間労働の抑制に一定の効果は見込めるだろう。

 残業時間の上限引き下げは既に多くの企業で取り組みが進んでいる。法案が「月100時間未満」とした繁忙期の特例措置についても、企業ごとに業務実態を踏まえた対応策を協議してもらいたい。

 ワークライフバランスの推進で、企業の生産性を高める取り組みは他にもある。終業から始業までに一定の時間をおく「勤務間インターバル制度」や在宅勤務制度、フレックスタイム制など、多様な働き方が選択できる環境整備もしっかりと進めてほしい。

 法案が、管理職などを含めた全ての労働者を対象に、企業に対して労働時間の把握を義務付けた点も重要だ。

 しかし、時間把握の方法に自己申告を認めたことで、曖昧な管理になる恐れもある。労働者の命と健康を守るためにも、各企業は責任を持って労働時間の管理を徹底させなければならない。

 一方、年収1075万円以上の一部専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」は、「過労死を招く」と導入に反対する声が根強い。

 ただ、制度の適用には、労働者本人の同意と労使委員会の決議が必要だ。加えて年104日の休日確保を義務付けるなど、実施のハードルは決して低くないとされる。

 問題は、対象となる職種や制度の不正運用を防ぐ手だてが不明確な点だろう。政府は説明責任を果たすべきだ。

 創造性や独創性が要求される職種を中心に、労働時間の長短では評価が難しい仕事も増えている。与野党は、幅広い観点から国民が納得のいく制度改正になるよう議論を深めてもらいたい。