戦争の惨禍が再び起きないようにするとの決意に基づいて、戦争放棄、戦力不保持を定めた憲法9条は、日本の平和主義の根幹である。

 日本は戦後一度も海外で武力行使をしなかった。それは「9条があったからこそだ」とする人は69%に上る。「他の要因もあったからだ」は29%にとどまった。共同通信社の憲法に関する最近の世論調査の結果である。

 改憲は慎重の上にも、慎重を期さなければならない。

 安倍晋三首相が、戦争放棄の9条1項、戦力不保持を定めた2項を維持した上で、自衛隊の存在を明記する文言を追加するよう提案したのは、昨年の憲法記念日だった。

 「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきだと主張し、2020年施行を目指すと時期も明示した。

 野党が反発したのは当然である。自民党でも石破茂元幹事長から「党憲法改正草案が総裁のひと言でひっくり返るなら組織政党ではない」との批判の声が上がった。

 それから1年もたたない今年3月、自民党憲法改正推進本部は、9条の改正条文案について細田博之本部長に対応を一任した。首相の意向を踏まえて9条1項、2項を維持し、別立ての「9条の2」を新設して自衛隊を規定する。

 細田氏は、複数の2項維持案のうち、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」として自衛隊を保持するとの案を各党に提示する意向を示した。

 石破氏は自衛隊を戦力と位置付けるために、2項の削除を主張した。それを押し切る形での一任取り付けだった。

 憲法改正を巡る党内手続きはもっと丁寧に行うべきだ。

 世論調査によると、9条改正は、必要ないが46%、必要が44%で拮抗(きっこう)したが、安倍首相の下での改憲には61%が反対し、賛成は38%だった。

 首相はこの結果をどう受け止めるのか。

 このところ陸上自衛隊のイラク派遣部隊や南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報が次々に見つかり、隠蔽(いんぺい)体質が批判を浴びている。シビリアンコントロール(文民統制)が機能しないのに、9条改正どころではあるまい。

 しかも、イラク派遣部隊の日報には「戦闘が拡大」などの記述があった。

 政府は「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」として派遣したが、日報の記述との整合性が取れるのか疑問だ。

 南スーダンPKOでも16年7月、政府軍と反政府勢力の大規模戦闘が起きた際、陸自が全員に武器携行命令を出したことが判明している。

 政府は当時「武力紛争ではない」と説明したが、「紛争当事者間の停戦合意」などPKO参加5原則が崩れていた可能性もある。

 国会論戦を通じ、自衛隊派遣の妥当性を検証することが大事だ。安倍政権は自衛隊の規律を正し、信頼回復に全力を挙げるべきである。