安倍晋三首相が意欲を見せる憲法改正を巡って、自民党は年内の国会発議を視野に入れていた。

 ところが、森友・加計(かけ)学園問題などの影響で、内閣支持率が低下し、「安倍1強」に陰りが見え始めた。

 もともと、憲法改正に関して自民党と温度差がある公明党の山口那津男代表は「国民の望む課題として憲法改正の優先度は高くない。特に9条は根強い反対論もある」と表明した。自民党内でも先行きを不安視する声が漏れる。

 本来、熟議の上で国会が発議する憲法改正の行方が、一内閣の支持率に左右される。それが、正常な政治の在り方といえるのだろうか。

 先日の憲法改正に関する討論会では、立憲民主党の枝野幸男代表が「従来の憲法解釈がリセットされ、海外で戦争ができる自衛隊になる」と批判を強めた。

 自民党憲法改正推進本部は9条への自衛隊明記と緊急事態条項、参院選の合区解消、教育充実-の改憲4項目の条文案をまとめたが、与野党の合意形成は困難を極めよう。

 2016年参院選で「1票の格差」の是正策として導入された「徳島・高知」「鳥取・島根」の合区は有権者の政治離れを招くなど問題が多く、放置できない。

 地方の声を国政に届きにくくする合区は、来年の参院選までに解消すべきである。

 自民党の条文案は、衆参両院議員の選挙に関して「法律で定める」とした47条の改正が柱だ。参院選で広域地方公共団体(都道府県)の区域を選挙区とする場合、改選ごとに少なくとも1人を選出-などと明記する。

 だが、他党からは、14条に基づく「1票の価値の平等」が損なわれかねないとして、批判の声が上がる。公明党は47条改正に否定的だ。

 ハードルの高い憲法改正を持ち出さなくても、参院の定数是正など法律改正で対応するのが現実的である。

 共同通信社の世論調査では、自民党が今年中の国会発議と20年の改正憲法施行を目指すスケジュールには、反対が62%、賛成は36%だった。

 衆参の憲法審査会での論議も停滞しており、自民党の思惑通りには進みそうにない。

 これまで、安倍首相は、改憲発議の要件を定めた96条の改正や環境権に言及するなど発言を変化させてきた。しかし、目指す本丸が9条改正であることは明白である。

 首相は9月の自民党総裁選で3選を果たすことで、改憲に勢いを得たいのだろうが、不祥事や疑惑が噴出し、予断を許さなくなってきた。首相の信頼度が揺らいでいる。

 有力候補の一人とみられる岸田文雄政調会長は、9条改正には慎重な姿勢を示してきた。総裁選の構図は定まらないが、その結果は、改憲論議に大きな影響を与えよう。

 今こそ、憲法の重さが問われている。国のかじ取りを目指す政治家は憲法観を、しっかりと語ってもらいたい。