鏡に映った顔、そこには親に似た顔がある。<うちむかう鏡に親のなつかしきわが影ながらかたみとおもへば>滝沢馬琴。かつて本紙「きょうの言葉」に載った、この歌が頭に浮かんだ

 阿波市のアエルワホールであった「北海道歌旅座」のコンサート。会場に入る二人連れの女性の顔は年の差はあれ、どこか似ていた。娘が母に「昭和の流行歌」を聞かせたかったか

 歌旅座は7人だ。司会進行役でコーラスにも加わる弥藤邦生さん(50)は言う。「搬入も撤収も、公演の合間の営業も総出。昭和をより知っている方々に納得してもらえるよう一人何役もこなす」

 思えば、訪れた人もまた何役もこなしている。家庭を守り、働き、地域を支えつつ。それぞれに思い出の歌があり、胸にとどまって離れない歌がある。だからこそ、舞台づくりには手が抜けないという

 月の沙漠、ゴンドラの唄、蘇州夜曲、リンゴの唄…に交じり、女性歌手のJUNCOさんが、オリジナル曲を披露した。「重ね日」。38年間の教師生活を終えた自身の父が苦しさや悔しさ、いろんな日々を例えた言葉だったという。<あなたはすべて受けとめて 傷つきながらも足を止めなかった>

 鏡の向こうに父の面影を見ることがある。その時、流れてくるのは昭和の流行歌だ。口ずさむと、声まで似てきたような気がする。