徳島文学協会と徳島新聞社が創設した掌編小説コンクール「阿波しらさぎ文学賞」の応募締め切りまで1カ月を切った。現在、事務局に寄せられている作品は数十点。締め切りとなる6月10日が近づくにつれ、応募数はかなり増えそうだ。

 創設の狙いは、小説を書くという行為を通して、生きがいや、真の豊かさを問い直してもらうことである。生きる意味を考えるきっかけにもなるはずだ。

 作品の中に、徳島ゆかりの地域、徳島の文化や歴史、産業などを登場させるのを応募条件とした。

 小説を仕上げる過程で古里を見つめ直し、その良さを再発見したり、掘り起こしたりすることにつながるだろう。地域文化の振興や活性化を促す効果もある。

 徳島は、阿波踊りや人形浄瑠璃などを挙げるまでもなく古くから文化、芸能活動が盛んな土地柄だ。では、文芸活動はどうだろう。

 95歳の今も創作意欲が衰えない瀬戸内寂聴さんをはじめ、ハンセン病と闘いながらも名作を残した北條民雄、「日本SFの父」と称される海野十三らは高く評価されている。

 しかし、熱心なファンを持つ作家は一握りである。全国的に知名度が高い文学者はほとんど輩出していないというのが実情だ。

 その一方で近年、同人誌の衰退に伴い、作家や作家の卵たちが地域に身を置き、地道に文章力を磨くということが少なくなってしまった。

 高校はどうか。三好市などが昨年度募集した「第8回富士正晴全国高等学校文芸誌賞」への応募が、県内からは脇町、池田の2校だけだったのを見ると、全体的に活気に乏しいと言えまいか。

 沈滞気味の文芸活動の再興に向けて書く機会を提供するのが、文学賞創設の意図である。高校生や大学生らに気軽に応募してもらうため、400字詰め原稿用紙で15枚以内を規定とした。全国公募とし、年齢、性別、職業、国籍は問わない。

 最終選考委員長には、徳島とも縁がある芥川賞作家の吉村萬壱氏を迎えた。8月下旬に受賞作が発表される。

 県内には他にも県立文学書道館などが募集している「とくしま文学賞」がある。小説部門は短編で50枚以内だ。締め切りは9月で、発表は12月の予定である。

 掌編の阿波しらさぎ文学賞に応募することで、まずは創作活動への自信を深めてほしい。とくしま文学賞にチャレンジする人もいるだろう。書き手のスキルアップにつながるという相乗効果も期待できよう。

 人それぞれに書きたい、伝えたいことがあるはずだ。臆せず活字にし、作品として発表することに意義がある。

 阿波しらさぎ文学賞の受賞者の中から、将来、中央文壇にはばたく書き手が育ってほしい。