学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題を巡る安倍晋三首相と野党との論戦に、失望した人も多かったのではないか。

 きのうの衆参予算委員会の集中審議は、先に参考人招致された柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)の答弁を踏まえ、首相自身や首相官邸がこの問題にどう関わったかが最大の焦点だった。

 しかし、議論は平行線のままで、疑惑の払拭には至らなかった。

 首相に「うみを出し切る」覚悟がみられず、野党も答弁の矛盾点や核心に触れる材料を突きつけることができなかったからだ。残念である。

 柳瀬氏は、学園側と2015年に3回面会したことを認めたが、愛媛県や今治市の職員とは面会した覚えがないなどとしたことに中村時広・愛媛県知事が反発、言い分が食い違っている。

 異常ともいえる事態だが、首相は「(柳瀬氏の答弁は)3年前の記憶をひもときながら正直に話していた」と擁護した。到底、納得できるものではない。

 愛媛県文書に記録された「本件は首相案件」を柳瀬氏が否定したのに対し、中村知事は「ありのままに書いた」と反論している。これについても首相は「言葉の印象というのは、それぞれ受け取り方が違うことも起こり得る」と述べただけである。

 どちらが真実を語っているのか。不明な点を解明しようとの思いはないのだろうか。

 柳瀬氏はまた、学園側との面会について首相に報告しなかったと語っていた。野党はこれを「不自然」としたが、首相は「国家の重大事でもない限り、途中段階で説明を受けることはほとんどない」とかわした。

 国家戦略特区指定の進め方にも疑惑が深まっている。

 柳瀬氏は特区の関連事業者との面会は加計学園だけと説明した。なぜ、加計学園だけが会えたのか。「加計ありき」や「加計優遇」の疑いが拭えない。

 首相はこれまで、一連の手続きに「一点の曇りもない」と述べてきた。きのうの答弁でも「適正に認可された」「歪められた行政をただした」などと公正さを強調したが、説得力に欠ける。

 共同通信社の世論調査では柳瀬氏の説明に「納得できない」が75・5%に達し、納得できるは14・7%。手続きについても「適切だったと思わない」が69・9%に上っている。首相はこの数字を謙虚に受け止めるべきだ。

 真相解明が進まない最大の理由が、首相をはじめ政府・与党にあることは言うまでもない。野党は柳瀬氏や中村知事らの国会招致を要求したが拒否した。消極的な姿勢は看過できない。

 ただ、野党も心証や言葉尻をとらえるだけでは時間を空費するだけだ。野党間で追及方法などを協議し、実のある議論にしなければ、国民から背を向けられよう。