トランプ米政権は、イラン核合意からの離脱を表明したのに続いて、在イスラエル大使館を商都テルアビブからエルサレムに移転した。

 どちらも国際社会の反対を押し切り、「親イスラエル」を鮮明にしたものだ。

 これにより、イスラエルとイラン、パレスチナとの間で武力衝突が発生し、多数の死傷者が出ている。対立が激化すればさらなる被害の拡大が懸念される。

 中東地域の混迷の度が深まっており、国際社会は結束して危機回避へ全力で取り組む必要がある。

 イラン核合意についてトランプ氏は、大統領就任前から「欠陥がある」として批判、離脱を示唆していた。イランを敵視するイスラエルも同じ立場だ。

 これに対し、核合意の維持を目指すフランスやドイツ、英国はトランプ氏を強く慰留していたが失敗に終わった。

 核合意は、2002年に秘密裏の核開発が発覚したイランと、国連安全保障理事会の常任理事国(米英仏中ロ)にドイツを加えた6カ国が15年7月に結んだ。

 イランが核開発の大幅制限を受け入れた代わりに、欧米が経済制裁を解除。イランは原油や天然ガスの輸出などが可能になった。

 多国間の粘り強い交渉によるものだけに、トランプ氏が非難されるのは当然だろう。

 米国は、イランへの経済制裁を再開する方針だ。本格化すれば、イランはもとより日本をはじめ、世界経済にも影響を及ぼす。再び核拡散を招く恐れも出てこよう。

 関係国には、米国に自制を求めるとともに、打開策を見いだす努力が求められる。

 米大使館のエルサレムへの移転も、歴代米政権の中東政策からの抜本的な転換を示している。

 トランプ氏は、11月の中間選挙や20年の次期大統領選を控え、イスラエル寄りの姿勢を前面に打ち出し、親イスラエルの支持層にアピールする狙いとされる。あまりに独善的でないか。

 露骨なイスラエルへの肩入れに、東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けるパレスチナだけでなく、パレスチナを支持するイスラム諸国の反発も強まっている。

 暗礁に乗り上げている和平交渉が、一層難しくなったのは間違いない。

 イラン核合意に関し、イランと英独仏、欧州連合(EU)は米国抜きでも堅持を目指す方針を確認した。パレスチナ情勢を巡って開かれた安保理緊急会合でも、米国の大使館移転について決議違反との批判が相次いでいる。

 米国はこれまで中東和平に深く関与し、存在感を示してきた。しかし、トランプ政権は指導力を発揮していないばかりか、国際社会からの孤立が際立つようになってきた。

 トランプ氏には、和平の仲介役としての重い責務がある。中東地域を混乱に陥れている政策を改めるべきだ。