旧優生保護法(1948~96年)に基づいて障害者らへの強制不妊手術が繰り返された問題で、70代の男女計3人の被害者が国に損害賠償を求める訴訟を札幌、仙台、東京の各地裁に起こした。

 1月に宮城県の女性が仙台地裁に提訴したのに続き、旧法下での不妊手術を巡る裁判はこれで計4件となった。

 提訴の動きが広がったことを、国は改めて重く受け止めなければならない。

 旧法は「不良な子孫の出生を防ぐ」という優生思想を掲げ、知的障害や精神疾患などを理由に、本人の同意がなくても不妊手術を認めた。手術されたのは約2万5千人、うち「本人同意なし」は過半数の約1万6500人に及ぶ。

 4件の訴訟はいずれも、不妊手術の強制が自己決定権などを保障する憲法に違反し、国が長年にわたって被害救済を怠ったと主張している。

 新たに提訴した3人は14~19歳ごろ、不妊手術を強いられた。東京地裁に訴えた男性は、障害があるとの診断を受けたこともなかったという。

 著しい人権侵害であるのは明白だ。

 既に弁論が始まった最初の訴訟で、国は原告の請求棄却を求めた。「当時は合法だった」として、謝罪や補償に消極的な姿勢を崩していない。新たな3訴訟でも請求棄却を求め、反論するとみられる。

 4件とも被害者と国が法廷で真っ向から対決するのは、残念である。

 人権に関わる国策の誤りが問われた裁判では、かつて熊本地裁で争われたハンセン病訴訟がある。「人間回復裁判」と評価されたこの訴訟の後に、国が取った対応を見習えないだろうか。

 患者を施設に隔離した国の施策は違法だった-とする判決を熊本地裁が出したのは、2001年5月。国は控訴せず、当時の小泉純一郎首相が患者らに謝罪し、補償金について定めた救済法を作った。法施行は判決の52日後という早さだった。

 ただ、ハンセン病訴訟は提訴から判決までに2年10カ月もかかっている。問題が長期化するのは望ましくない。

 強制不妊手術を巡っては、仙台地裁への初提訴後、国会で救済策を検討する超党派の議員連盟が発足したことに注目したい。議員立法による救済法案の提出を目指しており、ぜひ実現してほしい。

 こうした動きも踏まえ、今回の訴訟では判決の言い渡しを待つことなく、早期決着を図るべきだ。

 徳島県では今のところ提訴の動きは見られない。しかし、県内では391人が不妊手術を施されたことが明らかになっている。今後、提訴の可能性は十分にある。被害状況を把握するために県が4月に設けた相談窓口には、17日までに2件の相談があった。

 私たちの身近でも起きていた出来事である。優生思想や障害者差別を根絶していくため、訴訟の行方に関心を持ちたい。