安倍政権が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が、衆院厚生労働委員会で可決された。

 与党はあすの本会議で衆院を通過させる構えだ。

 法案には罰則付きの残業上限規制を盛り込むなど、過労死や過労自殺の防止につながると期待できる内容もある。 

 一方で、過剰な労働を誘発しかねない制度も含まれる。

 慎重かつ丁寧な審議が求められるのは言うまでもない。

 ところが、厚労委の採決の手法は到底、看過できないものだった。野党議員が質問を続けたが、自民党の高鳥修一委員長が質疑を打ち切り、怒号の中で、法案が採決されたのだ。

 野党は、法案の柱の一つである「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を削除するよう求めている。高収入の一部専門職を労働時間規制や残業代支払いの対象から外す制度で、「長時間労働や過労死を助長する」との批判を払拭できない。

 与党は厚労委の採決を控えて法案を修正し、高プロを適用された本人が後で撤回できる規定を入れ、日本維新の会などの賛成を得た。一定の配慮は示した形だが、多くの野党は納得していない。

 法案にはほかに、時間外労働(残業)の法定上限を繁忙期の特例でも月100時間未満とする内容や、非正規労働者の処遇改善に向けた「同一労働同一賃金」の導入も盛り込まれている。

 これらは、厳しい環境に置かれている労働者の待遇改善に役立つだろう。

 もともと、法案は4本柱の構成になるはずで裁量労働制の対象拡大も含まれていた。

 裁量制は、厚生労働省の調査で不適切なデータ処理や異常値が相次いで発覚したため、政府は法案からの削除を余儀なくされた。

 その上、法案が今国会で成立しなければ、「働き方改革国会」と命名した安倍晋三首相には大きな打撃になる。

 与党は、法案の会期内成立に全力を挙げる構えだ。

 だが、問題点を積み残して制度を導入すれば、さらなる悲劇が起きる恐れもある。

 働き方改革は、電通の女子新入社員が長時間労働の末に過労自殺する痛ましい出来事が起き、取り組みの機運を高めた経緯がある。

 過労死した人の遺族からは、「数の力で強行されるのはたまらない」と怒りの声が上がっている。

 政府・与党が、遺族の会の法案に対する声を無視していいはずはあるまい。

 法案作成の根拠の一つとなった厚生労働省の労働時間調査では、多数の異常値が見つかっている。議論のベースにもなる数字がこれでは困る。

 共同通信社の最近の世論調査によると、法案の今国会成立は「必要はない」が68・4%を占めた。

 人の命と生活に関わる重要な法案である。政府・与党は拙速を慎み、よりよい働き方を探ってもらいたい。