第1次世界大戦のさなか、ベートーベンの交響曲「第九」がアジアで初めて鳴門市で演奏されたことは、徳島が誇る史実である。

 きのうでちょうど100年。鳴門市の第九演奏会は、全国から注目を集めるイベントとして定着している。

 記念すべき節目の年に、認定NPO法人鳴門「第九」を歌う会が、第54回徳島新聞賞の大賞に輝いた。心から喜びたい。

 歌う会が設立されたのは1981年。翌年、鳴門市文化会館の落成記念として第九演奏会が始まった。

 特筆すべきは、出演者としてだけでなく、演奏会の運営も担ってきたことである。参加募集や会場設営はもちろん、指揮者やソリストの選考まで行っている。大変な努力が要るだろう。

 89年には全国の合唱団に呼び掛け、第九を歌う会の連合会を発足させた。さらに、鳴門市の姉妹都市であるドイツ・リューネブルク市への「里帰り公演」を実現させるなど、第九を縁に親善交流の輪を広げてきた。

 こうした取り組みは、市民合唱団の理想的な在り方を具現化したものと言えよう。

 きょうとあす開かれる演奏会にはドイツ、中国、米国の合唱団も加わる。分断と不寛容の風潮が漂う昨今である。平和と融和のメッセージを鳴門から発信してほしい。

 奨励賞はNPO法人アクア・チッタ、特別賞はラフティングチームのザ・リバーフェイスに、それぞれ贈られた。

 奨励賞のアクア・チッタは2005年から、徳島市の新町川沿いにある万代中央埠頭(ふとう)で清掃活動や屋台飲食、水産市、音楽ライブなどのイベント開催に取り組んでいる。

 川べりの古い倉庫をおしゃれに改修し、一帯を魅力ある空間へと変える試みは、特に若い人たちを引き寄せた。県の規制緩和に結びついたことで常設店舗や事務所も増え、にぎわいを創出している。

 「水都」を標榜(ひょうぼう)する徳島市のまちづくりに、今後も大いに貢献してもらいたい。

 特別賞のザ・リバーフェイスは、三好市などの吉野川上流で昨年10月に開かれたラフティング世界選手権での総合優勝が見事だった。

 この競技の世界大会の日本開催は初めてである。ラフティングの醍(だい)醐味(ごみ)と吉野川の魅力を世界に伝えた功績は、大いにたたえられる。

 メンバーは吉野川を愛し、県外から三好市に移住してきた。彼女たちの熱意と挑戦が地域を動かし、世界大会開催への道を開いた。吉野川が国内外から年間4万人も訪れるラフティングスポットとなったのも、チームの存在と活動があったからこそである。

 本県は人口減少などの深刻な課題に直面しており、将来展望が描きにくい。

 郷土の活性化を旗印とした3者の活動や成果は、県民の励みとなろう。改めて敬意を表すと共に、一層の活躍に期待したい。