市民感覚と大きなずれを感じさせる判断と言わざるを得ない。

 学校法人「森友学園」を巡る一連の問題で、大阪地検特捜部は当時の財務省理財局長の佐川宣寿・前国税庁長官ら財務省幹部や関係職員をいずれも不起訴とした。

 特捜部は異例の記者会見を開き、「社会の批判があることは承知しているが、犯罪かどうかは別で、慎重に判断した」と説明した。

 検察権力の行使は抑制的であるべきだし、世論に流されてはならないことは言うまでもない。だが、告発していた大学教授や市民団体だけでなく、検察内にも立件を求める声は少なくなかったという。

 「政権寄り」の結論との印象が強く、検察への批判が上がるのも当然だろう。

 疑惑の発覚から約1年4カ月、特捜部による捜査はこれで終結したが、告発した大学教授は検察審査会に審査を申し立てる方針だ。

 不思議なのは、与党内の反応だ。これで区切りが付いたかのような発言も出ているが、一連の疑惑が解明されたわけではない。国会として徹底した調査、究明に当たる責務がある。

 告発されていたのは佐川氏ら計38人。国有地売却に関する決裁文書改ざんの虚偽公文書作成や、土地を不当に安く売却し国に損害を与えたとする背任容疑などで、特捜部は「嫌疑不十分」「嫌疑なし」などと認定した。

 決裁文書の改ざんは、交渉経緯や安倍晋三首相夫人の昭恵氏らの名前を含む14件300カ所以上になる。昭恵氏や複数の政治家についての記述、土地取引を巡る「特例的な内容」や「本件の特殊性」といった文言も削除された。

 佐川氏の国会答弁との整合性を取るため、理財局側の指示で行われた。

 これについて特捜部は、契約方法や金額など根幹部分の書き換えや虚偽記載はなく、文書の趣旨が大幅に変わったとまでは言えないとした。

 国有地売却にどのような人物が介在していたのか。重要な情報も盛り込まれていたのではないか。それが削除されれば、本質的な部分が変わったと言えるのではないか。特捜部の判断は疑問を抱かせるものだ。

 特捜部は「必要かつ十分な捜査をした」と説明したものの、昭恵氏からの聴取は見送ったとみられる。

 さらに、会見では森友側への特例扱いや、公文書への信頼を揺るがす改ざん行為の背景に政治家の関与や官僚の忖度(そんたく)があったのか、といった核心部分の説明も避けた。

 公判によって明るみに出ることが期待されたが、その機会が失われたのは残念だ。

 国民や国会を欺いた前代未聞の事案である。野党は「訴追の恐れ」を理由に国会で答弁拒否を繰り返した佐川氏の証人喚問を、改めて要求している。与党はそれに応えてこそ真相解明への真摯(しんし)な姿勢を示すことになろう。