米朝首脳会談がきょう、シンガポールで開かれる。朝鮮戦争以来、敵対関係にある両国のトップが、史上初めて直接顔を合わせる歴史的会談である。

 最大の焦点は、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、朝鮮半島の「完全な非核化」にどこまで踏み込めるかだ。

 これまで国際社会は北朝鮮の核・ミサイル開発に揺さぶられ続けてきた。緊張状態に終止符が打たれ、平和への道筋を確かなものにできるかどうか。日本人拉致問題で進展があるのか。期待を持って注視したい。

 トランプ政権は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を北朝鮮に突きつけている。過去、何度も煮え湯を飲まされてきた経験があるからだ。

 北朝鮮は1993年、核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言。国際原子力機関(IAEA)の査察も拒んだため、米国が核関連施設の攻撃を検討するなど、事態は切迫した。

 翌年、米朝は核関連施設の凍結とエネルギー支援をセットにした「枠組み合意」を締結する。だが北朝鮮が秘密裏に核開発を続けていることが判明し、合意は破綻した。

 2005年には、両国に日本、ロシア、中国、韓国を加えた6カ国協議で、核放棄を盛り込んだ共同声明を出すところまで行き着いたものの、非核化の検証方法で対立。06年には北朝鮮が初の核実験を強行し、これもとん挫した。

 今回、北朝鮮は非核化の行動を取るごとに見返りを得る段階的措置を求めている。しかし振り返れば、交渉で得た時間的な猶予を使って、核・ミサイル開発を加速させてきたのが北朝鮮だ。

 それだけに、米側は、体制保証や経済支援の用意を表明しつつも、制裁緩和は非核化完了後との方針である。当然の対応と言うべきだろう。

 気になるのは、会談を控えて、「最大限の圧力という言葉は使いたくない」と述べるなど、トランプ氏が譲歩の姿勢を見せていることだ。60年以上休戦状態にある朝鮮戦争の終結合意も検討中と明言している。

 一時は会談の中止まで表明するなど、そもそもが発言の振れ幅の大きなリーダーであり、先行きは見通せない。11月には政権の審判となる中間選挙がある。目に見える成果を上げたいのはやまやまだろうが、「完全な非核化」という原則的な立場を忘れないでもらいたい。

 先の日米首脳会談で、トランプ氏は、北朝鮮に日本人拉致問題を提起することを確約した。これを受け、安倍晋三首相は「最終的には私と金委員長で直接協議し、解決していく決意だ」と強調、日朝首脳会談に意欲を見せている。

 長年、手詰まり状態にあった拉致問題の解決へ、この上ない機会である。日朝会談実現に向け、詰めの作業を急ぐ必要がある。