朝鮮半島の完全非核化に向けて、大きな一歩を踏み出したといえる。もう後戻りさせてはならない。

 史上初の米朝首脳会談で、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が「シンガポール共同声明」に署名した。

 長らく敵対関係にあった米朝、挑発し合っていたトランプ、金の両氏が新たな関係構築へ動き出した。

 北東アジアの平和と安定を築いていく確かな礎にしてもらいたい。

 共同声明で金氏は「朝鮮半島の完全非核化」を約束し、トランプ氏は北朝鮮に安全の保証を与えると確約した。道筋をつけられるのか。

 トランプ氏は非核化プロセスが迅速に始まるとしたが、問題は、「完全な非核化」をどう担保していくかだ。

 米国は北朝鮮に対して「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」を要求してきた。これが会談の焦点だったが、共同声明に文言が明記されなかったのは残念である。

 保有核兵器の申告や核関連施設の査察受け入れなど、北朝鮮に具体的な行動をどう促し、検証していくのか。CVIDについて踏み込まず、曖昧なままでは非核化の道は険しいと言えまいか。

 米国任せにすることなく、国際社会が連携し、監視していくべきだ。

 全ての核兵器や核関連施設を廃棄させるのは並大抵のことではない。北朝鮮の非核化交渉を巡っては、これまで幾度も裏切られてきただけに、不安は尽きない。

 金氏は体制保証を取り付けたとの印象が強い。共同声明を読む限り、交渉が長引く懸念がある。北朝鮮ペースにしてはならない。

 会談前、非核化実現まで制裁を解除しないとする米側に対し、北朝鮮は非核化の行動ごとに制裁解除などの見返りを得る「段階的措置」を要求してきた。その隔たりは埋まったのか。

 トランプ氏は制裁を当面維持するとしたが、核兵器の脅威がなくなれば解除することを明らかにした。

 適切な時期の訪朝に意欲を示し、金氏をワシントンのホワイトハウスに招待する意向のようだ。

 両首脳は、「和解」をアピールするだけではなく、歴史的な会談で得た成果を、目に見える形にしていくことが大切である。

 今回の声明で、朝鮮戦争での米国人捕虜や行方不明兵士の遺骨収集を行うことを確認した。60年以上も休戦状態にある朝鮮戦争の終結につなげてほしい。

 注視されたのは、日本人拉致問題である。

 トランプ氏は日本側が強く求めていたこの問題を金氏に直接提起した。

 安倍晋三首相は「日本が直接、北朝鮮と向き合い、2国間で解決しなければならないと決意している」と述べた。首相の外交手腕が問われることになる。