飲酒運転の車にひき逃げされ、亡くなった河野匠さん(撮影日時不明、遺族提供)

 夢をかなえるための一歩を踏み出そうとした矢先だった。10日、帰省していた石井町で飲酒運転の車にひき逃げされ、命を奪われた河野匠さん(24)=大阪市天王寺区=は、11日から大阪のフランス料理店で働き始めることになっていた。「いつか自分の店を持ちたい」。思い描いていた未来は突如、絶たれた。

 徳島科学技術高生の時に始めた趣味のスケートボードを通じ、大勢の友人がいた河野さん。お気に入りの髪形「ジャーヘッド(刈り上げた短髪)」にちなみ「ジャー」の愛称で親しまれていた。人を楽しませることが好きな、社交的な性格だった。

 科技高を卒業後、親元を離れて大阪に。もともと料理をするのが好きだったため、レストランで5年間修業を積んだ。フランス料理店に移ることを決め、春には本場の味を学ぼうと単身フランスを訪れた。

 12、13両日に営まれた通夜と告別式には計約450人が参列し、葬祭場は知人からの花輪でいっぱいになった。通夜の席には県外から駆けつけた友人が夜遅くまで残り、髪の毛を整えたり、頬をなでたりしてくれた。「息子の誕生日に匠君が作ってくれたケーキが冷蔵庫にあったから」。ケーキを手に大阪から訪れた人もいた。

 父由秀さん(56)は「ここまで匠を思ってくれている人がいる。親として誇り」と、息子への思いを口にした。

 飲酒運転のひき逃げに遭わなければ、新天地で夢を追い掛けていたはずの匠さん。由秀さんは「不慮の事故では絶対ない。殺人のようなものだ」と語気を強め、飲酒運転の厳罰化を訴えた。「こんなことは、二度と起こってほしくない」。