米国と韓国が、8月に予定していた定例の米韓合同指揮所演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を中止する。

 米朝首脳会談を受け、北朝鮮に非核化に向けた迅速な行動を促すのが狙いだが、効果は疑問である。

 これまで、北朝鮮は何度も国際社会との約束をほごにしてきたからだ。

 トランプ米大統領は米朝首脳会談後、北朝鮮との対話中は、米韓軍事演習を中止すると表明していた。「敵対的」と演習に反発してきた北朝鮮との信頼醸成を重視した判断のようだ。

 さらに米国は地上、航空戦力の統合訓練の中止も決めた。過去に在沖縄米海兵隊が参加したこともある訓練だ。

 米国は非核化交渉が膠着(こうちゃく)すれば、演習の再開もあり得るとの立場である。

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は演習中止を重く受け止め、非核化への行動に踏み出すべきだ。米国の譲歩を利用して非核化交渉を引き延ばすことがあってはならない。

 北朝鮮は米朝共同声明で、4月の南北首脳会談で表明した「完全な非核化」を進める意思を確認したが、米国などが主張する「検証可能で不可逆的な非核化」は明言しなかった。

 米国は近く北朝鮮に対し、首脳会談を踏まえた「詳細な要求」を履行時期と共に提示するとみられる。北朝鮮がどこまで真剣に取り組むか、要求への対応を見て判断するようだ。

 北朝鮮への要求には、非核化の検証方法や時期に関する米側の主張が盛り込まれる可能性がある。具体化を急がなければならない。

 課題は幾つもある。米国拠点の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、最新の商業衛星写真に基づき、寧辺にある核施設で、インフラ整備が速いペースで進んでいるとの分析を発表した。ウラン濃縮工場の稼働は継続しているとの見方を示している。

 北朝鮮が米国との非核化交渉を進めた場合でも、水面下で核・ミサイル開発を進める可能性は排除できない。米国が把握していない秘密施設もあるだろう。

 大切なのは、米朝で検証方法を詰め、実効ある措置を取ることである。

 トランプ氏は、北朝鮮との取引制限などを指示した大統領令の1年間の延長を議会に通告した。北朝鮮の「完全非核化」実現まで制裁を維持する方針だ。

 北朝鮮と友好関係にある中国も含めて国際社会が、北朝鮮の軟化を促した経済制裁を続けることが大事である。

 日本にとって米韓演習の中止は、安全保障上の不安要素だ。トランプ氏が将来的な在韓米軍の縮小・撤収の可能性に言及したのも気にかかる。

 米韓と北朝鮮の軍事バランスが崩れれば、朝鮮半島が不安定化しかねない。

 米国は軍事的抑止力を保ちながら、非核化への道筋を確かなものにしてもらいたい。