文部科学省でまたも教育行政への信頼を揺るがす事件が起こった。

 天下り問題や加計学園問題に続き、今度は受託収賄容疑で現役の局長が逮捕された。組織の信頼失墜に歯止めがかかっておらず、極めて憂慮すべき事態である。

 逮捕されたのは、同省前官房長で科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者。官房長だった2017年5月、文科省の私立大支援事業の対象校への選定で東京医科大に便宜を図る見返りに、自身の子どもを同大に合格させてもらったとされる。

 東京地検特捜部は、贈賄側の東京医大関係者を在宅で捜査。現金の授受はなかったが、佐野容疑者の子を合格させたことが賄賂に当たると認定した。

 事実とすれば、省の中核を担う幹部が、教育で最も重要な入試を私物化したことになる。あまりの露骨さに驚くと同時に、憤りを禁じ得ない。

 同省は佐野容疑者の局長を解任、大臣官房付とした。林芳正文科相の監督責任も問われよう。

 東京医大では、理事長や学長も佐野容疑者側に事業の対象校への選定を依頼したほか、入学試験の不正にも関与した疑いが浮上している。

 大学トップが不正を主導したとなれば、由々しき問題である。佐野容疑者との癒着の実態など、早急に全容を解明してもらいたい。

 問題になった事業は、特別補助の一つである「私立大学研究ブランディング事業」。大学の看板となるような研究を推進し、大学の独自色や魅力を発信する取り組みを支援するもので、同大は17年11月に選定された。

 この事業の17年度予算額は約55億円。同大は1年分の助成金として3500万円の交付を受けており、文科省は助成金の返還を求めるべきだ。

 佐野容疑者は16年6月から文科省の政策全般に関わる官房長を務め、17年7月に科学技術・学術政策局長に就いていた。

 少子化で経営環境が厳しさを増す私立大は、国の支援事業獲得にしのぎを削っている。佐野容疑者の意向が働いたとすれば、大学同士の競争を促してきた文科省の信頼が足元から崩れることになる。

 佐野容疑者は、昨年1月に発覚した天下りあっせん問題で監督責任を問われ、厳重注意処分を受けた。

 強い批判を受け、綱紀粛正が叫ばれていたさなかでの今回の事件だ。自覚のなさにあきれる。

 文科省はこれまで、各大学に入試の不正防止を求め、入試要項でも公平性や透明性の確保を強調していた。

 その幹部が自らルールを破り、不正の恩恵を受けていたとなれば、今後の指導に説得力を欠くことになろう。

 天下りや加計学園問題で、同省への風当たりは強まるばかりだ。信頼回復へは、綱紀粛正の徹底とともに組織の立て直しが急務である。