国際社会への影響を考慮せず、11月の中間選挙をにらんで成果を上げたいとの思惑も透けて見える要求に、素直に応じられるだろうか。政府は日本の立場を明確に主張すべきだ。

 イラン核合意からの離脱を表明したトランプ米政権が、日本を含む各国に対し、イラン産原油の輸入をゼロにするよう求めている。期限は11月4日までとした。

 最大の収入源を断ち切って徹底的に締め付け、ウラン濃縮の完全停止やテロ組織への支援中止など、イランに譲歩を迫る狙いがある。2015年の核合意に基づき解除していた制裁を本格的に復活させる構えだ。

 苦境が続くイラン経済はさらに難局を迎える。穏健派のロウハニ大統領は激しく反発しており、国益が保証されなければ、核合意で制限してきたウラン濃縮活動を無制限に再開すると警告している。

 対米強硬派が台頭し、政権運営が行き詰まる事態もあり得る。イラン核問題の解決策として国際社会が支持してきた核合意は、崩壊の危機に直面しているといっていい。

 禁輸に伴う供給不安は、石油価格の上昇も招き、世界経済に打撃を与えよう。イランにも問題はあろうが、トランプ氏の決定は一方的で影響が大きすぎる。包括的な戦略も示さず、情勢を不安定化させるだけの中東政策は、米国の利益にもなるまい。

 制裁の再発動は国際社会の支持を得ていない。イラン原油の最大の輸入国である中国は拒否する姿勢だ。核合意存続でイランと一致する欧州は救済策を協議している。

 日本は、エネルギー源を安定的に確保する観点から欧米とは一線を画し、イランとの関係を重視する独自外交を繰り広げてきた。

 原油輸入量全体の5%程度をイラン産に頼っており、米国の要求に応じれば経済に悪影響が及ぶ。一定の輸入量を確保したいのが本音だ。

 米国は、12年にも禁輸措置を実施している。その際、日本はイランからの原油輸入を大幅に減らすことで、米国と折り合った。

 今回のトランプ氏の決定は、中間選挙対策の意味合いもあり「交渉の余地があるのか不明」(外交筋)。政府は、対象国からの除外や停止までの期限先延ばしなどで、米国から妥協を引き出したい考えだが、見通しは厳しい。

 安倍晋三首相は、トランプ氏への配慮から、検討していた今夏のイラン訪問を断念した。日本の独自性を印象づけ、問題解決へ存在感を示す機会ともなったはずなのに残念だ。

 禁輸要求に応じなければ、北朝鮮問題などで連携が欠かせない米国との関係がぎくしゃくしかねない。難しい立場にあるが、今後のためにも不合理な要求には厳然とした態度を示す必要がある。関係国と協議し、トランプ氏にしっかりと物申していくことが大切ではないか。