第九アジア初演の日に、器械体操をするドイツ兵=1918年6月1日、板東俘虜収容所(鳴門市ドイツ館提供)

 第1次世界大戦中に板東俘虜(ふりょ)収容所(鳴門市)などで撮影された大量の写真が、ドイツ国内に現存することが分かった。元捕虜の子孫がアルバムを所有しており、市ドイツ館は375枚分の複写画像を入手。ベートーベン「第九交響曲」のアジア初演の日に、収容所を撮影した写真が初めて確認された。演奏当日の様子を知る手掛かりになりそうだ。

 写真は元ドイツ工兵中隊伍長ヨハン・グレーゴルチックさんのひ孫、フェーリクスさん=独在住=が所蔵。母校ルール大(独ボーフム)のヤン・シュミット博士にアルバムを提供し、その画像が高知大の瀬戸武彦名誉教授(独文学者)を通して、4月にドイツ館に届いた。

 375枚の中には、ヨハンさんが以前いた松山収容所(松山市)の写真なども含まれ、ドイツ館が詳しい撮影場所や日時の特定を進めている。ヨハンさんは、板東時代に水泳教室の教官を務めたことで知られる人物だ。

 ただヨハンさんが撮影したのではなく、写真技術を持つ捕虜が収容所内に開いた店舗で、記念写真や絵はがき用として購入したとみられる。板東関連の写真は少なくとも100枚以上はあるという。

 このうち注目されるのは、収容所の広場であん馬や鉄棒、重量挙げなどをするドイツ兵と、それを見学する大勢の日本人男性を捉えた写真だ。

 収容所近くの警察署の日誌「雑書編冊」には「1918年6月1日、松江豊寿所長が撫養中学校長と郡内の教員95人を引率し、収容所内で器械体操する捕虜を見学した」との記述があり、「第九アジア初演」の日の写真であることが分かった。演奏会を写したショットは今のところ、見当たらないという。

 ほかには、遠足時に楽器を持つ楽団、収容所内の舞台での演劇の様子、隣接する大麻比古神社境内で木橋を建設中の捕虜16人の集合写真などがある。

 ドイツ館の川上三郎館長は「初見の写真も多く、非常に貴重な資料だ。今後の研究に活用したい」と話している。