冷戦終結後、国際秩序を支えてきた米国と同盟国との関係が揺らぎ始めている。

 ブリュッセルで開かれた、米国や欧州などの29カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、トランプ米大統領は防衛費の負担額を巡り、各国への批判や要求をエスカレートさせた。

 鉄鋼・アルミニウムの輸入制限やイラン核合意離脱など、数々の難題を突き付けるトランプ氏に、欧州各国は不信感を募らせている。

 にもかかわらず、トランプ氏は今回の首脳会議でも同盟国を半ば敵視する言動を繰り返した。

 国益を優先し、同盟関係を軽視するトランプ氏の姿勢は到底、容認できるものではない。加盟国が批判を強めるのは当然だが、これ以上亀裂が拡大しないよう全力で修復に努めるべきだ。

 トランプ氏が不満を抱くのは、国防支出で米国が他の加盟国よりはるかに多く負担していることだ。

 加盟国はトランプ氏に配慮し、国内総生産(GDP)比2%に引き上げる目標を掲げたが、2018年中に達成できるのは8カ国で、多くの国はそのめどが立っていない。

 とりわけ、トランプ氏の批判の的となったのがドイツ。18年の支出は米国の3%台に対し、ドイツは1%強にとどまっている。加えて昨年、米国に1200億ユーロ(約15兆7千億円)の貿易赤字をもたらしたのも一因だろう。

 会議では、24年までの従来目標の実現に「揺るぎない意思で取り組む」とする共同宣言を採択した。各国は、NATOの結束をアピールするためにも宣言内容を重く受け止めてもらいたい。

 ただ、トランプ氏は一連の議論を蒸し返すかのように、「直ちに2%払え」「4%払うべきだ」などとツイッターに投稿したほか、改善が見られなければ「独自の道を行く」などと警告、NATO離脱も示唆したという。

 米軍なしに欧州の安全保障は成り立たない。そうした現状も頭に入れてのことだろうが、威圧的な発言は信頼関係を損ねるだけだ。

 トランプ政権は中長期国家戦略で、欧州やアジア諸国との同盟を「国際安全保障の支柱」と位置付けている。

 ところが、この戦略とは裏腹に通商・安全保障問題などで同盟国を批判、関係は悪化の一途をたどっている。

 6月に開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)でトランプ氏は、通商問題を巡り各国と対立した揚げ句、既に採択した首脳宣言の承認を拒否した。

 先の米朝首脳会談では、同盟国である韓国に事前に相談せず、「費用が節約できる」などとして米韓合同演習の中止を約束した。

 トランプ氏の外交は、同盟関係の地政学的な重要性を考慮せず、財政面を重視する傾向が強い。安全保障を米国に依存する日本も、そのことを十分に認識する必要がある。