強い憤りを覚える。騒動の根にあるのは、都合の悪い事実を住民の目から遠ざけようとする町の隠蔽(いんぺい)体質だ。

 神山町の第三セクター・神山温泉(社長・後藤正和町長)の取締役支配人だった男性が、温泉の経営診断を巡って町側と対立し、「徳島新聞に情報を提供した」ことなどを理由に解雇された。

 内部告発に対する懲罰的解雇とすれば問題である。「公益通報者保護法」の趣旨にもとり、住民の知る権利の否定につながろう。

 発端は2016年度、町が福岡市のコンサルタント業者に、事業費300万円で神山温泉の経営診断を委託しようとしたことだ。本紙の取材で、業者は登記簿上、解散状態にある、と分かった。

 従業員側は、業者が信頼できず顧客情報が漏えいしかねない、と反発。診断は結局、別の会社が行った。

 後藤町長は「(解雇の)最大の理由は、半分以上出資している町との意思疎通や連携が取れなくなったこと。町の財産である以上、しっかりと管理運営する責任がある」と説明する。

 働く者の権利は最大限尊重されなければならない。ましてや神山温泉は、町の関連施設である。解雇にも慎重になって当然なのに、どこまで事実を精査したのだろう。

 そもそも今回の処分に当たって、本紙は町側から何の問い合わせも受けていない。つまりは町側の一方的な言い分による処分なのである。

 報道機関が情報の出どころを明らかにすることはあり得ない。情報源の秘匿という報道の大原則から逸脱したかのような町の主張は、徳島新聞への信頼を著しく傷つけるものだ。

 男性は県労働委員会に「解雇通知の撤回」を求める斡旋を申し立てている。解雇自体の是非はそこで争われるが、報道機関への対応はまた別の問題として残る。

 公益に資する情報の提供者が保護されず、解雇理由としてまかり通るのなら、何らかの疑義が生じても、告発しようという者は萎縮し声を上げにくくなる。事態は一層深刻化して、例えば今、日本を代表する大企業で起きている不正隠しのようなことに陥りかねない。

 町の財産だからこそ、都合の悪い点も含めて、きちんと情報を公開する必要がある。住民利益の観点からも、職員は黙っておけ、と言わんばかりの今回の処分事由は認められない。

 町長は16年にも、徳島新聞記者の取材を拒否するよう全町職員や教員に指示し、批判を浴びている。情報公開の重要性はよくご存じのはずだ。

 にもかかわらずの今回の事態は理解に苦しむ。報道の自由や知る権利を保障した憲法に明白に反しており、ひいては健全な民主主義の発展を阻害しかねない。猛省を促すとともに、「徳新に情報」とした解雇事由の速やかな撤回を求める。