【写真左】「教わったことを守ってきただけ」と話す遠藤さん=石井町石井の自宅【写真右】「受賞は望外の喜び」と語る山下さん=徳島市川内町富吉の自宅

 「想像もしていなかったので驚くばかり。大変光栄に思う」。2日、2015年度の徳島県文化賞に選ばれた徳島ペンクラブ顧問の山下博之さん(83)=徳島市川内町富吉=はそう喜びを表した。阿波文化創造賞に決まった箏曲家の遠藤綾子さん(48)=石井町石井=は「恩を次世代に還元する」と、決意を新たにした。

 ◎県文化賞 徳島ペンクラブ顧問・山下博之さん

 徳島の文芸活動の普及と振興に力を尽くした。「本を読むこと、文章を書くことを生きがいに、その素晴らしさを多くの人に知ってほしいと歩んできた。受賞は望外の喜び」と顔をほころばせる。

 高校の国語教諭だったころから徳島ペンクラブの会員として活動し、2007年からは会長を6年間務めた。

 少年時代に愛読していた徳島市出身のSF作家海野十三の再評価にも尽力。1992年に発足した顕彰団体「海野十三の会」の会長として、文学碑の建立や企画展を通じて「日本SFの先駆者」に光を当てた。

 「郷土に目を向け、発信したいという気持ちはことさら強い」。その思いは、人形浄瑠璃「傾城阿波の鳴門」の研究につながり、99年には「私本 阿波の十郎兵衛」での県出版文化賞受賞に結実する。

 好きな作家は田村泰次郎や丹羽文雄。後に続こうと母校の早稲田大に入学したほどだ。

 ペンを執ることの魅力を「物事を多角的に見る力を養える。何事も一極集中の傾向が強い今こそ、私たちに必要な力だと思う」と言う。

 文芸を愛する後輩たちには、自らも開館に向けて奔走した県立文学書道館を活用することを望む。「せっかく拠点移設があるのだから、ペンに関心がある人たちが気軽に集ってサークル活動をしてほしい。そこから新しい世代が育ってくれれば」と期待を込めた。

 ◎阿波文化創造賞 箏曲家・遠藤綾子さん

 箏曲家として、新しい邦楽の可能性に挑んできた。リコーダーやマリンバなど他楽器と協奏したり、朗読や人形浄瑠璃、ミュージカルに音楽を付けたり。「古典楽器も、世界から見れば一つの楽器。伝統だけにとらわれない魅力の発信方法があるはず」。進取の姿勢が受賞の決め手になった。
 「教わったことを守ってきただけ。賞は『これから頑張れ』という励ましだと思う」と気を引き締める。

 鳴門市生まれ。鳴門高校では剣道に打ち込み、県強化選手にもなった。京都女子大に進学後、箏と出合う。友人に誘われて箏曲クラブに入り、弦にじかに触れて音を奏でる喜びに魅せられた。

 大学を出て県内のソフトウエア開発会社で働く傍ら、週2回上京して現代箏曲家の故沢井忠夫さんに師事。40歳を過ぎてから鳴教大大学院に進み、音楽理論を学んだ。

 演奏以上に力を注ぐのは、邦楽の裾野を広げる活動だ。15年ほど前から子ども向け教室を開き、学校用の教材開発にも携わった。「今後も邦楽で受けてきた恩を次の世代に還元できるようにしたい」。