核大国の米国とロシアの関係は、冷戦後最悪レベルに冷え込んでいる。

 約1年ぶりに行われたトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領との首脳会談は、両国の関係を改善し、緊張緩和へ状況を打開できるかが最大の焦点だった。

 共同記者会見で両首脳は、2021年に期限を迎える米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)を含む核軍縮で連携する考えを示した。

 外交官を追放し合い、「新冷戦」と呼ばれるほどの関係に、修復の機運が出てきたのは一歩前進だろう。

 シリアやウクライナ問題、米大統領選へのロシア介入疑惑などで立場は懸け離れており、一気に改善される可能性は低い。事実、会談でめぼしい成果はなかったが、対話が始まった意義は小さくない。

 とりわけ、影響が大きいのは核軍縮に向けた協議だ。

 米ロはこのところ、互いへの不信感から核戦力増強を加速させている。

 トランプ政権は2月、「核態勢の見直し」を発表。低出力核弾頭(小型核)や核巡航ミサイルの新規開発を盛り込むなど、これまでの核軍縮の方針を転換した。

 ロシアはこれに反発、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核搭載が可能な無人潜水機などの戦力を強化している。

 新STARTがこのまま期限切れとなれば、米ロの軍拡競争に歯止めがかからなくなる恐れがある。両首脳が期限延長の必要性を共有したのは歓迎できる。

 中距離核戦力(INF)廃棄条約の履行など具体化への課題は多いが、対話を軌道に乗せてもらいたい。

 関係改善に影を落としているのが、ロシアによる16年の米大統領選への介入だ。プーチン氏は一貫して関与を否定、トランプ氏もプーチン氏への批判を避けてきた。

 会談直前に米司法当局は、民主党陣営にハッキングしたとしてロシア情報機関の12人を起訴したが、トランプ氏はプーチン氏を追及しなかったばかりか、捜査を「ばかげている」と断じた。

 疑惑の相手に対しては根拠もなく信頼し、身内の情報機関の結論は支持しない。米大統領とは思えない対応で、理解に苦しむ。米国内で批判が出ているのも当然だろう。

 米ロ関係が冷え込んだのは14年のロシアによるクリミア半島編入がきっかけだ。

 当時のオバマ米政権は、欧州各国と共に対ロ制裁を次々と発動。ところが、トランプ氏は欧州との協調を重視せず、「米国第一」の独自路線を進めている。

 これにより、対ロシア包囲網は緩み、プーチン氏を利する状況になっているという。

 国際社会から孤立するロシアとの良好な関係構築に力を注ぐトランプ氏だが、その原因については考慮していない。自らの不見識な言動により今、米国が友好国の信頼を失い、孤立しつつあることに思いを致すべきだろう。