多くの客が立ち寄って地ビールを味わう徳島ステーションブリュワリー=徳島市寺島本町西1の徳島駅クレメントプラザ地下1階

夫婦で醸造所を経営するマヌスさんとあべさん=神山町神領

 1990年代に発売が相次いだ地ビールの人気が再燃している。かつては一過性のブームに終わったが、品質の向上が格段に進み、地域の食材を使った個性的な風味と豊富な種類が消費者に喜ばれている。徳島県内でもここ数年に醸造所が次々とオープンし、味わいのように魅力がじわりと広がっている。 

 神山町神領で7月1日にオープンしたのが「KAMIYAMA BEER」。2016年にオランダから同町に移住したアイルランド人のマヌス・スウィーニーさん(38)とあべさやかさん(38)夫妻が、地元有志の協力を得て小規模醸造所を建設。夏ミカンやスダチなど季節のかんきつ類と、神山の在来種小麦を使った「SHIWA SHIWA ALE」など4種類を造っている。

 現在、土日に樽生の地ビールを提供し、平日は330ミリリットル入りのボトルを販売しているほか、飲食店からの注文も相次いでいる。240リットルのタンク3基を備えて年間約1万リットルの生産を予定しており、あべさんは「週末にマーケットや音楽ライブなどを催し、町内外の人が気軽に食べて飲んで楽しめる場所にしていきたい」と意気込む。

 上勝町正木の「ライズ&ウィン ブリューイングカンパニー」は15年5月にオープンした。食品衛生検査会社「スペック」(徳島市)が、上勝町のごみ排出ゼロを目指す取り組み「ゼロ・ウェイスト」に共感し、地域のにぎわいづくりの一環として建てた。

 ポン酢用に果汁を搾った後に廃棄していた地元特産の柚香の皮を香り付けに使った「ルーヴェンホワイト」など4種類を販売。過疎地にもかかわらず、県内外から年間1万人以上が訪れている。

 和田康義店長(37)は「勝浦ミカンや上勝阿波晩茶、なると金時など地元の食材にこだわっている。徳島の生産品や魅力も一緒にアピールできれば」と期待を込める。

 17年には、ビールを増産するための工場を同町生実に新設した。酵母菌を培養する研究施設や来客者用の試飲室も設けており、予約制の見学ツアーも受け付けている。

 徳島市東船場町1にある「麦酒工房Awa新町川ブリュワリー」は13年8月に開業し、県内の人気再燃ムードを生み出した先駆け的存在。開店当初の3種類から6種類に増やし、スダチの酸味とハチミツのほのかな甘みが特徴の「新町川すだちハニー」をはじめ、季節ごとの旬の県産食材を使った地ビールを提供している。

 4月24日からは徳島駅地下1階「駅バル横丁」で2号店「徳島ステーションブリュワリー」を開店。醸造所も併設し、間仕切りのガラス越しに実際に造っているところを見られる。客層は30~40代の男性が中心だが、列車やバスの待ち時間に立ち寄る人が多く見られ、女性の一人客もよく訪れるという。

 多田翔悟店長(33)は「立地を生かしてなじみがない人にも気楽に味わってもらい、地ビールの良さを知ってほしい」。

 16年からは毎年、「徳島地ビールフェスタ」が徳島市の藍場浜公園で行われている。今年5月のフェスタでは、Awa新町川ブリュワリー、ライズ&ウィン ブリューイングカンパニーをはじめ、岡山、広島などの15社が出店して約40種類を販売した。

 地ビールの普及活動に尽力している日本地ビール協会(兵庫県西宮市)によると、全国の醸造所数は17年4月時点で255カ所。13年から4年間で48カ所増加しており、ここ2、3年は特に顕著だという。また東京商工リサーチのまとめでは、17年1~8月の出荷量が判明した87社のうち、7割以上が前年同期の出荷量を上回り、人気の復活ぶりがうかがえる。

 同協会の山本祐輔理事長は「技術が向上し、小さな醸造所でも大手メーカーと張り合えるようになったことが、大きな要因。こうした流れが続くよう今後も努力していきたい」と話している。