核兵器の開発から実験、保有、使用まで包括的に禁じる「核兵器禁止条約」が国連で採択され、1年が過ぎた。

 核兵器を違法とする史上初めての条約である。加盟国の3分の2に迫る122カ国・地域が賛成し、実現した。50カ国・地域が批准すれば90日後に発効する。

 ところが、これまでに批准を終えたのは10余りの国・地域にとどまる。想定よりペースは遅く、発効までに今後2年程度かかる見通しだ。

 核兵器保有国が、経済支援が必要な途上国を中心に、批准しないよう圧力をかけているという。核廃絶を求める国際世論への背信行為と言うほかない。

 核保有国は、核拡散防止条約(NPT)のみが核軍縮・不拡散の国際的な枠組みだとし、禁止条約では「核兵器を一つも削減できない」と批判する。NPTで排他的に核兵器保有を認められた米ロ英仏中の五大国が、同時に課された核軍縮の義務を果たしてきたのなら、そんな主張も成り立つだろう。

 しかし実際は違う。

 ストックホルム国際平和研究所によると、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた9カ国が持つ核弾頭の数は、今年1月時点で計約1万4千発を超える。前年より470発減ったものの、各国とも核兵器の近代化を進めており、「核軍縮に向けた真の進展は依然遠い」と研究者は分析する。

 NPT体制の限界は、北朝鮮の暴走を見るだけでも明白だ。2年後の再検討会議も物別れに終わりかねないと危惧されている。

 禁止条約が生まれたのは、遅々として進まない現状に、非保有国が不信感を募らせたためだ。各国の指導者はこの点を忘れてはいけない。

 無論、日本も同様である。唯一の戦争被爆国として、溝が深まっているといわれる保有国と非保有国の橋渡し役を自任しながら、条約に背を向けるのはどうしたことか。

 核兵器の使用条件を緩和し、「使える核兵器」とも称される小型核の開発を盛り込んだトランプ米政権の新核戦略指針「核体制の見直し」を支持するなど、米寄りの姿勢が際立つ。米国の「核の傘」に頼っているとはいえ、あまりに行き過ぎだ。

 制定に力を尽くした非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞を受賞するなど、核兵器禁止条約の存在感は高まっている。

 保有国が発効阻止に動くのも、裏を返せば、核兵器による安全保障を否定する条約と、それを支持する国際世論の高まりに危機感を抱いてのことだろう。

 禁止条約に反対する一つの根拠だった北朝鮮情勢も変化しつつある。条約と距離を置いている場合ではない。「核兵器は絶対悪」の根本に立ち返り、「核なき世界」に向けて進路を示す。それが日本の役割だ。