世界経済の懸念要因である米国と欧州連合(EU)の貿易摩擦が、沈静化に向かう可能性が出てきた。

 トランプ米大統領とEUのユンケル欧州委員長との会談で、自動車分野を除く工業製品の関税撤廃などに向けて新たな貿易対話を始めることで合意したのだ。

 米政権は外国製の車に高関税を課すことも検討しているが、協議中は、米国が輸入制限を発動しても、EUには適用しないことで一致した。

 対立がエスカレートし泥沼化する恐れがあっただけに、対話の機運が出てきたことは歓迎できる。これを機に粘り強く協議を続け、報復関税の応酬にも歯止めをかけてもらいたい。

 米国の2017年の対EU貿易赤字は、1500億ドル(約17兆円)に上る。中国に次ぐ規模で、トランプ氏はEUに対し、赤字削減に取り組むよう圧力をかけている。

 中でも、強く要求しているのが、米国製乗用車への関税だ。EUの乗用車に課す米国の関税は2・5%なのに対し、EUは米国の乗用車に10%を課している。

 トランプ氏は関税をゼロにする必要があるとして再三、譲歩を求めていたが、EU側は強く反発。制裁と報復を繰り広げる状況を招いている。

 会談では、EU側が米国産の大豆や液化天然ガス(LNG)の輸入拡大などで譲歩したため、車の関税撤廃などを巡る問題は先送りされることになった。

 双方が歩み寄り、正面衝突が回避された形だ。とはいえ、トランプ氏が強硬姿勢を改める保証はない。中国との貿易協議では、いったん棚上げすることで合意した対中制裁関税を、最終的に強行した前例もある。

 今回の会談では、トランプ氏が11月の中間選挙をにらみ、国内の農家や産業界、議会でくすぶる不満を考慮し、EUとの対話を打ち出して「一時停戦」を演出したと見る向きもある。

 今後の協議で納得する成果が得られなければ、合意を白紙撤回することは大いに考えられる。貿易紛争が再発する火種は依然として残ったままだ。EU側に警戒する声が出るのも当然だろう。

 協議の成否はまだ見通せない。それでも、EUが硬軟両にらみで会談に臨み、一定の成果を上げたことは、米国との交渉を控える日本にとっても参考になるのではないか。

 米国との閣僚級による新たな貿易協議(FFR)が来月にもスタートする。

 最大の焦点となるのが、日本車への追加関税だ。実施されれば日本のメーカーにとって大きな打撃となるだけに、なんとしても回避しなければならない。

 ただ、その見返りとして農産品の市場開放や車の輸入拡大などを迫られることが予想される。日本側はどのように対応するのか。一定の譲歩も想定した戦略と交渉力が求められよう。