社会的弱者や生きづらさを抱える人たちの思いをすくい上げるのが政治家の務めではないか。

 ところが、自民党の衆院議員が、月刊誌で性的少数者(LGBT)への行政支援に対して、当事者を深く傷つける、偏見に満ちた主張を展開し、波紋が広がっている。

 「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるのか。彼ら彼女らは子どもをつくらない、つまり『生産性』がない」「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのか」―。

 比例中国ブロックの杉田水脈氏が、月刊誌「新潮45」に「『LGBT』支援の度が過ぎる」とのタイトルで、こうつづった。

 当事者や野党議員だけではなく、多くの人たちがネット上や抗議行動などで怒りの声を上げている。

 子どもをつくるかどうかは、それぞれの生き方の問題である。杉田氏の主張は、LGBTの差別解消や法整備が進む国内外の流れにも明らかに逆行するもので、非難が高まるのは当然だ。

 自民党は、2016年に「性的指向、性自認の多様な在り方を受け止め合う社会を目指す」との基本方針を公表しており、この方針にも反するものだ。

 しかし、二階俊博幹事長は「人それぞれ、政治的立場はもとより人生観もいろいろある」と問題視しない姿勢を見せており、首をかしげざるを得ない。

 電通が15年に20~59歳の7万人に実施した調査では、7・6%が性的少数者に該当した。これによると、LGBTは、特別な存在ではなく、学校や職場など私たちのごく身近にいるといえる。誰にも相談できず、一人苦しんでいる人も多いだろう。

 同性パートナーシップ条例を制定した東京都渋谷区など全国の自治体で同性カップルを公認する動きが相次いでいる。教育現場や大学、企業などでの支援の取り組みも少しずつ進んでいただけに残念でならない。

 お茶の水女子大は20年度から、LGBTの一つで、戸籍上は男性でも自身の性別が女性だと認識している「トランスジェンダー」の学生を受け入れると発表したばかりだ。これまで「女子」としていた入試の出願資格を今後、「戸籍または性自認が女子」と改める。

 「多様性を包摂する社会の対応として当然と考えた」とする同大の室伏きみ子学長の主張は、性的少数者を支援する世界の潮流と合致するものだといえる。奈良女子大や日本女子大などの女子大も追随するという。

 さまざまな個性を尊重する多様な社会の実現は多くの人々の願いだ。ただ、偏見や差別も一部に残り、闘っている当事者もいる。

 LGBTに対する社会の理解を深め、当事者の苦しみや不安を払拭することこそが、政治の責任といえよう。