徳島県小児科医会 日浦恭一(徳島新聞朝刊 満1歳にて掲載)

出産前後の母親の多くは「出来ることなら完全母乳栄養を行いたい」と考えています。母乳が新生児にとって優れた栄養法であることは誰もが認めるところです。それにも拘わらずなかなか完全母乳栄養が進まずに悩んでいる場合が多く見られます。

母乳が優れている点は、赤ちゃんにとって最高の栄養である、吸収が良い、免疫物質を含んでいて感染症に罹りにくい、便秘になりにくい、アレルギーが起こりにくい、赤ちゃんが待たずにすぐ飲める、愛着形成に良い、経済的であるなどが挙げられます。

新生児は出生直後から哺乳することが出来ます。乳首を探す行動や口に入った乳汁を吸い込む行動などは哺乳反射と呼ばれ、意識せずに反射的に行われます。最初、母乳は少ししか分泌されませんが、新生児が哺乳行動を見せることによって母乳も徐々に増加します。

しかし誰でも最初から上手に授乳できる訳ではありません。上手に飲ませている人の真似をすることが上達のこつです。子どもが大勢生まれていた時代にはお互いの授乳を見ながら自然に授乳のこつをつかんでいました。

出産直後、早期の母児接触は新生児の生理的な変化を落ち着かせる作用があります。その後の母子同室制も同様の効果があり、母児の愛着形成に役立つ働きがあります。愛着が形成されると育児意欲が高くなり、育児能力も高くなります。

新生児が生理的に安定すれば睡眠や授乳のリズムが確立しやすくなります。リズムが安定すれば授乳が一定の時間に行われて、授乳と睡眠が落ち着けば育児はぐっと楽になります。日々の育児の中で生活リズムが安定すれば気分的に余裕が生まれます。