[写真左]第4、5腰椎の骨のずれによって脊柱管が狭くなった状態[写真右]手術後

 薬で痛み抑えても問題ないか

 【質問】64歳の主婦です。腰の骨が1カ所大きくずれており、痛み止めを処方してもらっています。しかし、痛みを抑えると、症状の程度や悪化の可能性にも気付けないと思い、あまり飲まずに湿布で緩和しています。「我慢し続けると精神も病む」という記事を以前に読んだのですが、薬で痛みが分からなくなっても良いものでしょうか。専門家の意見をお伺いします。

 城東整形外科内科(徳島市福島1)
 岡田祐司院長

 腰に負担掛けない工夫を

 【答え】第1から第5まである腰椎の骨がずれる症状を「腰椎すべり症」といいます。すべる方向によって前方、後方、側方に分類され、多いのは前方です。

 原因を大別すると<1>先天性<2>分離<3>変性-の三つ。<1>は生まれつきの形成不全により、成長とともにずれが進行して若年期に発症するものです。<2>は成長期の過度な運動による疲労骨折(分離症)が元となり、骨の間にある椎間板のクッション性が低下(椎間板変性)して生じます。<3>を発症する大半は50~60代の女性です。

 以上から、ご質問の方は<3>の「変性すべり症」だと推測します。腰椎の後方部分にある椎間関節の変形や椎間板変性、女性ホルモンなどが影響しているといわれていますが、解明されていません。エックス線撮影で診断するほか、症状が進行すると触診でも分かることがあります。

 初期は主に腰痛や下肢の痛み、しびれなどの症状が出ます。進行すると間欠性跛行といって、足のしびれや痛みが強くなり、休み休みでなければ歩けなくなります。背骨の真ん中にある脊髄と神経の通る脊柱管が狭くなる(脊柱管狭窄症)ためです。

 痛みの緩和には、鎮痛剤や湿布などの外用剤を処方します。狭窄症状には神経の周りの血流を改善させる血管拡張薬(プロスタグランディン製剤)が、有効な場合もあります。効果が乏しければ、神経の周囲に直接薬剤を注入するブロック治療もあります。

 薬だけでは痛みを取れない患者さんも多く、服用で痛みを軽減させることができるなら、患者さんにとって良いことです。ただし、痛みが改善されて楽になったとはいえ、腰に負担を掛けてしまうと再発や悪化が危惧されます。これはすべり症だけでなく、膝の変形性関節症なども同様です。

 草取りのような前かがみの動作を控えるなど腰に負担が掛からないように工夫すれば、QOL(生活の質)を維持できると思います。症状の程度に応じて内服と湿布を組み合わせたり、湿布だけにしたりと使い分けましょう。腹筋や背筋など体幹筋を強化する体操やコルセットによる腰椎固定などは悪化防止に役立つかもしれませんが、すべりが治るわけではありません。

 何をしても症状が改善せず、日常生活に支障を来すなら手術を検討しなければなりません。手術の主な目的は、神経の圧迫を取り除くこと。内視鏡や手術用顕微鏡を使い、小さな皮膚切開で余分な骨や分厚くなった靭帯を切除し、狭くなった脊柱管を拡張します。手術範囲や方法は、担当医とよく相談してください。

 腰椎すべり症は決して珍しい病気ではありません。薬物療法で症状をコントロールしながら「上手につきあう」ことが大事です。