広島はきょう、長崎は9日に、被爆から73年の「原爆の日」を迎える。心新たに犠牲者を悼み、二度と悲劇を繰り返さないと誓いたい。

 米軍が1945年に投下した原爆は、同年末までに広島で約14万人、長崎で約7万4千人の命を奪ったとされる。現在も大勢の人を、原爆症という放射線による健康被害や差別、偏見で苦しめている。

 非人道的な殺りく兵器を消し去ることができず、今なお「核兵器のない世界を目指そう」という決意を示さなくてはならないのが、残念でならない。

 昨年、核兵器の保有や使用を禁じる「核兵器禁止条約」が国連で採択された。加盟国の3分の2近い122カ国・地域が賛成し、実現した。

 核兵器を違法とする史上初の条約で、被爆者の悲願だった。しかし、採択から1年が過ぎても発効されていない。米国を筆頭とする核兵器保有国が、発効を阻止しようと発展途上国に圧力をかけているという。

 米国の「核の傘」に頼る日本は、条約に参加していない。核・ミサイルを持つ北朝鮮の脅威などを理由に、政府は条約に否定的な立場を崩していない。

 日本政府は94年から毎年、国連総会で核廃絶決議案を提出している。廃絶決議を主導しながら禁止条約には顔を背けるという姿勢は、明らかに矛盾している。

 条約批准国の仲間入りを果たし、早期発効に向けて尽くすべきだ。

 6月12日に開かれた史上初の米朝首脳会談では、朝鮮半島の完全非核化を約束する共同声明が発表された。詳しい工程表がなく半信半疑だったとはいえ、一定の期待を集めたのは事実である。

 ところが、北朝鮮が非核化を進めていない事態が明らかになった。国連安全保障理事会の専門家パネルは、北西部の都市寧辺で核施設が活動を続けていると報告している。

 平気で約束をほごにする行為がまた繰り返されるとは、北朝鮮には失望するばかりである。

 だからといって、核兵器の根絶を目指す行動にブレーキをかけるわけにはいかない。

 共同通信の最近のアンケートで、全国の被爆者の8割が「日本政府は核兵器禁止条約に参加すべきだ」との意思を表している。切実な声に応える必要があろう。

 トランプ米大統領は核兵器の使用条件を緩和した新核戦略指針を、米朝会談後も撤回していない。オバマ前大統領が宣言した「核なき世界」の実現は、足踏みするどころか後退してしまっている。

 昨年のノーベル平和賞の受賞スピーチで、非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のフィン事務局長は、核の傘に依存する国々を「他国を破壊する共犯者となるのか」と批判した。

 一番の標的は日本だろう。厳しい言葉をかみ締め、今こそ世界に範を示す時である。