米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP)と、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が2019年に発効する見通しとなった。

 両協定が発効すれば、関税の撤廃・引き下げが進み、あらゆる産業に、海外への「攻め」と、輸入品に負けない「守り」が求められよう。

 心配されているのが1次産業だ。とりわけ、徳島のように小規模農家が多く、外国や北海道・東北などの国内他産地と比べて生産性で見劣りする地域には不安が渦巻く。

 こうした地域には、外国産との厳しい競争に打ち勝てる体力が、もう残されていないとの指摘もある。

 1次産業は各種補助金や制度により手厚く保護され、従事者に攻めの意識が育ちにくい状況が続いてきた。結果として高齢化、担い手不足が深刻化した。田畑が放棄され、山が荒れた。この状況下、厳しい競争が待ち構えている。

 徳島県が両協定発効による県内1次産業への影響額を試算した。外国産の安い牛肉や木材などの輸入が増え、生産額は最大で年間26億5千万円減るとはじいた。

 今回、県は国の手法を用いて影響を試算したが、そもそもこの国の手法に対する疑問がある。

 国の試算は、安い輸入品が増え、国産農産物の価格の下落が避けられないと想定しながらも、国内生産量も食料自給率も維持されるという。政府が講じるコスト削減や高品質化、機械化、収入補填(ほてん)などの支援策の効果が表れることが前提となっているためだ。

 楽観が過ぎないか。過去のさまざまな施策展開にかかわらず、下降線をたどり続けてきた1次産業が、自由化の荒波の中で現状を維持するのがいかに至難の業かは容易に想像できる。「政府は数字を小さく見積もり、批判をかわそうとしている」(鈴木宣弘東大大学院教授)との厳しい意見も聞かれる。

 TPP、EPAはもちろんチャンスでもある。特に、自動車や家電など輸出産業には追い風になる。1次産業にあっても好機と捉え、意欲を示す農家もある。消費者には輸入ワインやチーズ、豚肉などが安くなるメリットがある。

 徳島県の商工業分野に関する影響試算によると、両協定の発効で、県内総生産額は計743億円のプラス効果がもたらされ、就業者数も計4100人増えると見込む。

 だが、県の試算以上に影響が出るとの不安が1次産業の現場にはある。担い手が離職する事態が相次げば、地域社会にも打撃が及ぶ。国や県には、実効性のある支援策が求められる。

 発効まで時間は少ない。県内1次産業は今、成長産業への一歩を踏み出せるのか、衰退が加速するのかの岐路に立たされている。対策には多くの税金が投じられる見込みだけに、官民が本腰を入れ、納税者も納得できるビジョンを示す必要がある。