沖縄県の翁長雄志知事が、膵がんのため死去した。67歳だった。

 4月に膵臓の腫瘍を摘出する手術を受けた。5月に退院した際に病名を公表し、その後は抗がん剤治療を受けながら公務をこなしていた。

 米軍基地問題で国と闘い続けた現職知事の突然の訃報であり、関係者の衝撃の大きさは計り知れない。謹んで哀悼の意を表したい。

 翁長氏は2014年の知事選で初当選した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止を公約に掲げ、移設推進の前知事に圧勝した。

 かつては自民党県連の幹事長も務めた筋金入りの保守系で、前任の那覇市長時代も普天間問題については県外移転を是とする立場だった。

 辺野古移設阻止に軸足を置くようになったきっかけは、政府にある。「誠心誠意、県民の理解を得る」と言いながら多くの県民の意に反し、移設作業を強行する手法に失望したからだ。

 保革の枠を越えた知事として3年8カ月、移設阻止のスタンスは揺るがず、政府と対立し続けた。先月27日には、前知事が行った辺野古沿岸の埋め立て承認を、撤回する方針を表明したばかりだった。

 県民を守るためには政府にも屈しない。翁長氏の毅然とした姿勢は、地方自治の在り方を示したとも言えよう。

 1期目の任期が12月に迫っていた。去就は明らかにしていなかったが、病に冒されなければ再選を目指したはずである。公約が道半ばだったのは無念だったに違いない。

 沖縄の重大な政治案件に、翁長氏の死去が今後どう影響するのか、気掛かりである。

 埋め立て承認の撤回は、県が正式な手続きを踏めば、工事は一時中断せざるを得ない。だが政府は、撤回処分の取り消しを求める訴訟などに打って出る構えを見せる。

 政府の主張に沿った司法判断が下れば工事は再開し、沿岸の海域に土砂が投入されることになる。そうなれば、ますます反対派住民との対立が深刻化することになろう。

 翁長氏の死去に伴う知事選は、公職選挙法の規定により50日以内に行われる。当初の11月から9月実施へと前倒しになる見通しとなった。

 移設を進める政権与党は宜野湾市長の擁立を決めている。一方の移設反対派は、よりどころとしていた翁長氏を失い、候補者調整に迫られているため、戦いの構図はまだ見えてこない。

 県民投票で移設の賛否を問おうという動きもある。条例制定を求める10万人分の署名が集まっている。9月にも県議会で可決される見込みだったが、翁長氏の死去で先送りになる可能性が強い。

 知事選と県民投票は、沖縄の民意を知るという重要な意味を持つ。政府は土砂投入を急がず、まずはこれらの結果を見極めるべきではないか。

 誠心誠意、県民の理解を得る姿勢を見せてもらいたい。