徳島地方最低賃金審議会は県内事業所に10月から適用する本年度の最低賃金について、時給を26円引き上げて766円とするよう、鈴木麻里子徳島労働局長に答申した。

 厚生労働省の中央審議会が本県の目安額として示した25円を、1円上回る。

 答申通りに確定すれば、時給で提示する方式となった2002年度以降で最大の上げ幅となる。

 影響が大きいアルバイトやパートなど、非正規労働者の生活改善に結びつくものだ。大幅な増額を支持したい。

 20円を超える引き上げは、3年連続となった。好景気に沸いたバブル期以来の上げ幅である。

 本県の最低賃金は、最近5年間で100円アップした。それ以前に100円上がるのには18年もかかっているから、目を見張るものがある。

 安倍政権は3年前から、毎年3%程度引き上げる目標を掲げている。最近の大幅増は、政府目標を忠実に反映してきた結果といえよう。

 とはいえ、十分な水準に達しているとは言い難い。

 時給766円では週5日、フルタイムで働いても、年収は160万円程度である。

 ワーキングプア(働く貧困層)の上限とされる200万円にも届かず、安心して生活できる額とは言えない。

 大都市と地方との賃金格差も課題として残る。

 各都道府県で本年度の答申が相次いでおり、最も高額の東京は27円アップの985円と千円に迫った。本県とは219円もの開きがある。大阪も27円増の936円で、本県より170円高い。

 大都市に働き手が流れているというのに、これだけ差があると流出を食い止めるのは難しいだろう。期待するのは、大都市の水準に追い付く引き上げである。

 答申通りに最低賃金が底上げされた場合、これを下回る時給の労働者は県内に8115人いると推計されている。労働者全体の7・3%で、恩恵の度合いは小さくない。

 半面、企業にとっては人件費の負担増を強いられることになる。増加幅が大きいだけに、収益の圧迫要因になりかねない。

 徳島地方審は答申に際し、経営体力の弱い中小企業や小規模事業者への支援策を政府が講じるよう、文書に申し添えた。同感である。

 来年10月には、消費税率10%への増税も予定されている。企業が人件費がかさむことに危機感を強めるのは無理もないことだ。

 政府は生産性向上への助成や税制優遇など、一層の支援に取り組む必要がある。

 中小企業が大手から不利な取引を被らないよう監視を強めるのも重要だ。

 買いたたきや代金の支払い遅延など、下請法に違反する事案が後を絶たない。こうした不当行為を防ぎたい。企業が積極的に賃金アップに踏み切れるような環境整備が欠かせない。