民間企業の手本となるべき中央省庁の裏切り行為に憤りを禁じ得ない。

 国土交通省や総務省などが、義務付けられた障害者の雇用割合を40年以上、大幅に水増しし、法定雇用率を上回っているように装っていたことが分かった。

 国による障害者の雇用実態は、実際に公表している人数の半分以下の可能性があるというから驚くばかりである。

 なぜこうした不正がまかり通ってきたのか。政府は早急に詳しい実態を明らかにしなければならない。

 障害者雇用率制度は障害者への差別を禁じ、就労機会を広げるのが目的だ。

 法定雇用率について、国や自治体は模範となるため、民間より高い2・5%(3月末までは2・3%)に設定されている。

 昨年は国の33行政機関で6900人の障害者を雇用し、平均雇用率は2・49%としていた。省庁別でも当時の目標2・3%を達成したことになっていたが、実際は1%に満たない省庁が多いという。

 水増しは、1976年に身体障害者の雇用が義務化された当初から、10近い主要省庁で恒常的に行われていた。障害者手帳を持たない対象外の職員を合算するなどしていたとみられる。

 各省庁は毎年、厚労省に障害者雇用者数を報告していたが、中身の真偽まで確認する仕組みはなかった。報告した職員は、厚労省から指摘がなかったため漫然と報告を続けていたと明かしている。

 これではチェック機能が働かなかったのは当たり前である。誰がどのような判断で水増しを続けてきたのか、責任の所在を明確にしなければ再発防止は図れまい。

 民間企業では昨年、全国で49万6千人の障害者が雇用され、雇用率は1・97%といずれも過去最高を更新した。大企業の中には、子会社の障害者雇用数を親会社に合算するなどの方法で法定雇用率をクリアする例もある。

 省庁は、勤務の拘束時間が長く、国会対応など突発的な仕事も多い。こうした事情から障害者の採用が進まなかったとみられる。

 だからといって、それは言い訳として通らない。障害者が働きやすい環境をつくることが先決ではなかったか。

 国は誰もが生き生きと働ける1億総活躍社会の実現を掲げている。障害者の雇用促進も率先して進め、企業を監督する立場である。障害者団体からは「言語道断だ」と怒りの声が出ている。

 今回の事態が民間の障害者採用にブレーキをかけないか懸念される。国は猛省し、障害者雇用の理念を改めて徹底しなければならない。

 省庁では森友学園を巡る文書改ざん、文部科学省の汚職事件など耳を疑うような不祥事が続いている。法令やモラルに対する官僚の意識はどうなっているのか。信頼回復へ、しっかりとした処方箋を示してもらいたい。