「記録的な大雨になる恐れがある」「命を守る行動を」-。この夏、何度も聞いた警告である。迫る危険を回避するため、適切に行動できただろうか。

 気候変動の影響もあって、これまでの常識が通用しない規模や態様の災害が相次いでいる。家族の命を守る準備は万全か。「防災の日」のきょう、改めて考えたい。

 こんな数字がある。静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)の調査では、西日本豪雨で大雨特別警報が出た岡山、広島、福岡3県の住民の8割以上が警報を認識していた。しかし実際に避難したのは約3%だった。

 豪雨では、200人以上が亡くなった。犠牲者数は平成では最悪だ。

 徳島県内で死者は出なかったが、「偶然が重なっただけ」というのが専門家の見方である。同様の災害が、いつ身の回りで発生してもおかしくはない。

 「まず、自分が住む地域と自宅のリスクを知ること」。防災システム研究所の山村武彦所長は強調する。

 地域のハザードマップを見たことがあるだろうか。町の約3割が泥流にのまれた岡山県倉敷市真備町地区の浸水域は、マップが示す浸水域とほぼ重なっていた。広島、愛媛両県でも、土砂災害警戒区域や土砂災害危険箇所で災害が発生している。

 マップの精度は高い。水害や地震といった災害ごとの被害想定や避難所を、あらかじめマップで確認しておくことが「わが家の防災」の基本となる。どんな場合に、どんな経路で、どこへ逃げるか。非常時の連絡方法なども、しっかり話し合っておこう。

 迷うのは、避難するタイミングだ。気象情報には、警報や注意報のほか、土砂災害警戒情報や記録的短時間大雨情報、大雨特別警報など複数ある。これを受けて自治体が避難準備情報や避難勧告・指示を出す。分かりにくいとの指摘もあり、国は見直しに着手する。だが、次の災害に間に合わない恐れもある。

 避難のポイントは「早め、明るいうち、念のため」。自治体の指示を待つのではなく、周辺の状況や時間帯を見極め、自分で判断しなければ逃げ遅れかねない。

 「大丈夫だろう」は通じない。「気付いた時には避難できない状態だった」。被災地では、そんな声をよく聞く。

 真備町地区で犠牲になった51人のうち42人は、高齢者ら自力避難が困難な要支援者だった。自治体による要支援者避難の「個別計画」策定も進んでおらず、悲劇を繰り返さないためには隣近所の力が重要になる。

 無論、「公助」に抜かりのないよう手を尽くすべきだが災害時、行政の対応にはどうしても限界がある。西日本豪雨では、地域で声を掛け合って行動し、難を逃れたケースもあった。命を守るには「自助」に加え、「共助」の力を鍛えていくことが大切だ。