両親から虐待され、子どもが死亡する悲惨な事件が相次いで起きている。

 東京都目黒区で3月、船戸結愛ちゃん=当時(5)=が両親から虐待を受けて死亡した事件は、社会に大きな衝撃を与えた。

 全国に210カ所ある児童相談所が昨年度に相談や通告を受け対応したのは、13万3778件(速報値)に上り、過去最多を更新したことが分かった。

 配偶者への暴力によって子どもがストレスを受ける「面前DV」が虐待と認識され、数字を押し上げたが、事態は年々深刻化している。子どもの命を守る取り組みを強化しなければならない。

 結愛ちゃんの事件を踏まえて、政府は今年7月、緊急対策を決定した。現場への周知を徹底し、抑止力につなげてもらいたい。

 緊急対策では、虐待通告から48時間以内に面会などで安全確認ができなかった場合、児童相談所が立ち入り調査を実施し、警察との情報共有を進めることをルール化した。結愛ちゃんのケースでは、母親が面会を拒否したため品川児相が安全確認できず、死亡に至った。

 虐待の問題は親子間や家族内にとどまり、潜在化しやすい。それだけに、より一層連携を進め、情報の共有化を図っていく必要がある。

 改めて指摘されたのは、転居前の香川県の児相と品川児相との間で、リスクの認識にずれがみられたことである。このため緊急性が高い場合には、児相間で職員同士が対面して引き継ぐことを原則化。共同で家庭訪問することも盛り込んだ。

 頼りになるのは児相だが、問題は相談件数の伸びに対して、子どもの面談や保護者の指導に当たる専門職「児童福祉司」の数が追い付いていないことだ。政府が、2022年度までに児童福祉司を約2千人増員することを打ち出したのは当然だろう。

 ある児相所長の「次々と降ってくる案件への対応を迫られる。長期的なケアが必要な子どもに十分な時間を取ることもできない」との話は、疲弊する現場の一端を映す。負担の軽減が急務だ。

 虐待を生む要因や背景にも目を向けることが大切だ。虐待している親の中には子ども時代に虐待を受けていた人が少なくなく、複雑なトラウマを抱え、治療が必要なケースがあるとの指摘もある。

 保護者の孤立や貧困、子どもの発達など家庭が抱える悩みは多様化し、児相頼みでは対応しきれない状況だ。

 福井大子どものこころの発達研究センターの友田明美教授は「近所の人でも保健師さんでもいい。密室化させず、できるだけ早く玄関を開けるべきだ。皆で子育てを支援するという、おせっかい的な社会にすることが必要」と説いていた。

 地域の見守りも肝心だ。再発防止に向け、あらゆる手だてを講じたい。