飼育記録が残るウミガメで国内最長寿の「浜太郎」(中央)の甲羅のあかを落とす田中学芸員(中)ら=2016年12月、日和佐うみがめ博物館カレッタ

 美波町日和佐浦の大浜海岸に上陸するアカウミガメの保護に向け、日和佐うみがめ博物館カレッタ(同町日和佐浦)が、海岸で生まれたカメの飼育に乗り出す。半世紀以上にわたり、地域を挙げてウミガメの保護に努めてきたが、近年は海岸環境の変化などで、上陸や産卵の数が減少しているためだ。海岸は国の天然記念物に指定されており、現在は飼育は認められていないが、カレッタは今後、人工繁殖を念頭に、町や県教委と協議して文化庁への申請を目指す。海岸が1967年にウミガメ産卵地として全国で初めて国天然記念物に指定されてから今年で50年。関係者は「ウミガメの町」を次の半世紀に受け継ごうと、新たな保護策に期待を寄せている。

 大浜海岸では上陸するウミガメも天然記念物となっており、卵も含め、高波にさらわれる恐れがある場合などを除いて保護することができない。上陸したウミガメが砂浜で産んだ卵は、カレッタで人工ふ化させた後、全て放流している。

 一方で、上陸・産卵数の減少には歯止めがかからない。砂が減ったなどの海岸環境の変化や、個体数の減少が主な原因だが、不明な点も多い。カレッタで現在飼育されているアカウミガメは、他の海岸で生まれて名古屋港水族館(名古屋市)などから寄贈された個体がほとんど。大浜海岸で生まれたのは、指定前の50年に日和佐中の生徒が人工ふ化させ、飼育記録が残るウミガメで国内最高齢の浜太郎(66歳、雄)だけとなっている。

 このままでは将来、大浜海岸からウミガメがいなくなる恐れも出ている。そこでカレッタは、「ウミガメの町」を永続させる取り組みの切り札として、海岸に産み落とされた卵からふ化させたカメの飼育に乗り出すことにした。一定数の個体をカレッタで飼育し、人工繁殖させることで、大浜海岸に由来するウミガメの系譜を絶やさないようにしようという考えだ。

 飼育を実現させるには、保護の必要性を実証し、国天然記念物を所管する文化庁に認められる必要がある。カレッタは今年から、町や県教委と協議しながら、申請手続きの準備を本格化させる。

 カレッタの田中宇輝学芸員(30)は「ウミガメの町としてかつては観光客も多く訪れていたが、上陸数の減少もあって現在は変わりつつある。もう一度、地域ぐるみで保護に取り組んでいけるようにしたい」と意気込む。

 大浜海岸では、毎年5~8月にアカウミガメが産卵のため上陸する。上陸数はピークの68年に308匹が確認された後は減少傾向が続き、96年の119匹を最後に100匹を超えていない。2016年は過去2番目に少ない7匹で、うち産卵数は過去最低の2匹にとどまった。