保護者に付き添われて登校する児童=13日午前7時50分ごろ、徳島市の千松小

 12日朝に徳島市中島田町3の高齢者施設で清掃員の男が同僚女性を刺して逃走した殺人未遂事件では、徳島名西署が限定的な情報発信にとどめたため、市内の小中学校の保護者らに混乱が広がった。刃物を所持している可能性が高いにもかかわらず、署が報道機関向けに広報文を発表したのは、事件発生から約12時間もたってから。インターネット上ではデマや臆測も飛び交う事態となり、警察の広報姿勢が問われている。
 
 署によると、被害者の上司からの110番で事件発生を認知したのが、12日午前7時すぎ。容疑者が逃走したため署は同10時ごろ、現場周辺の小中学校や幼稚園などに「中島田方面で傷害事件があり、犯人が捕まっていない。子どもが絡む事件ではないが、戸締まりなど注意してほしい」と電話連絡した。

 各校は「傷害事件が発生し、犯人(刃物を所持している可能性あり)が逃走中との情報が入りました」などと保護者に一斉メールを送信。保護者に児童の迎えを依頼したほか、時間を早めて集団下校をさせるなどの対応を取った。

 一方、署から発信される情報が限られたため、保護者や近隣住民らが会員制交流サイト(SNS)に「全然情報がないし、遅いし、怖いよ」と書き込んだり、実在の小学校を挙げて「刃物を持った男が押し入ったらしい」と事実と異なるうわさが出たりと、不安や臆測が広がった。

 各校や市教委をはじめ、徳島新聞社にも心配した保護者らからの問い合わせの電話が殺到。だが、署の曽我部順一副署長は取材に対し「広報していないので詳細について答えられない」などと情報提供を拒み、正確な情報がつかめない状態が長く続いた。

 結局、署が事件発生を報道機関向けに公式発表したのは午後6時50分を過ぎてから。署はその理由を「捜査が進み、(傷害より悪質な)殺人未遂事件になると判明したため判断した」と説明したが、ある県警幹部は「地域社会に与える影響が大きいため、警察内では早めに発表すべきだという意見も出ていた」と話す。

 遅すぎる署の情報開示に、現場近くの千松小に息子を通わせる30代の母親は13日朝、「十分な情報が入ってこなかったので、今どういう状況か分からなかった。怖い思いをしているし、子どものことを考えると心配だ」とこぼした。