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社説
1月23日付  トランプ政権(上)  理念なき外交の先行きは  
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 トランプ米大統領が宣言した「米国第一」は、外交に対する姿勢によく表れている。

 新政権の基本政策では、「力による平和が外交政策の中心だ」と表明した。

 単独行動主義を強め、イラクとアフガニスタンで戦争を始めたブッシュ政権を思い起こさせる。国際協調主義を掲げ、対話を重視したオバマ前政権とは対照的だ。

 国益優先は当然であり、どの国も同じだろう。しかし、「二つの戦争」が憎悪と暴力の連鎖を生み、争いの火種をばらまいたように、力を過信するのはあまりに危険だ。

 同盟国の日本や欧州諸国が先頭に立ち、柔軟な外交姿勢の重要性をトランプ氏に説くべきである。

 注目されるのは、ロシアとの関係だ。トランプ氏は就任前、ロシアに対する制裁解除と引き換えに、大幅な核軍縮の合意に期待感を示した。

 冷え切った米ロ関係が改善するのは歓迎できる。核軍縮の前進にも異論はない。

 ただ、制裁はウクライナ南部のクリミア編入に対するものである。安易に解除すれば、力による現状変更を容認することになりかねない。先進7カ国(G7)の結束を弱める事態にもなろう。

 実業家出身のトランプ氏が、外交を損得勘定に基づく取引と考えているのなら誤りである。超大国の理念なき外交は世界を混乱に陥れる。

 「取引外交」の危うさは、中国との間でも出てきている。中国と台湾は不可分の領土とする「一つの中国」原則に縛られない考えを、トランプ氏が表明したからだ。

 南シナ海問題などで譲歩を迫る狙いだとしても、中国が譲れない原則であり、軍事衝突に発展する恐れもある。冷静な対応が求められる。

 新政権は基本政策で、過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅を最優先課題に挙げた。就任演説でも「イスラム過激派によるテロ」を完全に根絶すると強調した。

 テロは許されない。だが、イスラム教や移民への敵視を強めれば、憎しみが増幅されることを忘れないでほしい。

 懸念されるのは、トランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館を移転する考えを示したことだ。アラブ諸国は反発しており、中東の不安定さが増すのは必至だ。挑発的な行為は厳に慎んでもらいたい。

 日本は、新政権に日米関係の重要性を再認識させる努力が欠かせない。

 トランプ氏は選挙中、米軍駐留経費の負担増を求める発言をしたが、日本の負担割合は他国と比べて高い。日本駐留は米国にも大きな利益がある。粘り強く誤解をただしていかなければならない。

 日本に軍事面で過度な貢献を求めてくる可能性もあるが、できないことは明確に拒否する姿勢が必要だ。

 日米関係が揺らげば、アジアの安定が損なわれる。大切なのは、健全な同盟関係を深化させることである。

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