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社説
10月23日付  足利事件再審  誤判原因の徹底究明を  
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 1990年に栃木県足利市で4歳女児が殺害された足利事件の再審公判が宇都宮地裁で始まった。

 殺人罪などで無期懲役が確定、その後釈放された菅家利和さん(63)に無罪判決を出すための公判である。

 今年6月に東京高裁が再審開始を決め、栃木県警本部長と宇都宮地検検事正が謝罪した段階で、それは確実なものとなっていた。

 宇都宮地裁の佐藤正信裁判長は、法廷で菅家さんを「被告人」と呼ばず「さん付け」で呼び、判決の際に何らかの形で裁判所としての謝罪を検討する意向を示した。

 検察側も無罪を主張しており、判決は来年春にも言い渡される見通しだ。一日も早く菅家さんの名誉回復が図られるよう、法曹関係者は全力を挙げなければならない。

 ただ、再審が「無罪」を追認するだけに終わるのでは不十分だ。国民の理解も得られないだろう。

 捜査から裁判に至るすべての過程で、なぜ冤罪(えんざい)という重大な過ちが生じてしまったのか。再審公判では、その真相を解明できるかどうかが問われている。

 「17年半苦しんできました。それはなぜなのか。そのことを明らかにする無罪判決を求めます」。菅家さんも、法廷でそう訴えた。

 再審公判の審理方法は刑事訴訟法に具体的な記述がなく、裁判所の指揮に負うところが大きい。地裁は、菅家さんの訴えを真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。

 全国で本格化している裁判員裁判について、本社加盟の日本世論調査会が今月行った調査では、裁判員を「務めたくない」との回答が70%に上り、参加意欲の低さが浮き彫りになった。

 背景には、足利事件に象徴されるように「冤罪にかかわってしまうのではないか」という懸念もあるのだろう。そうした不安を和らげ、裁判員制度を国民に定着させるためにも、誤判に陥った原因を徹底検証する必要がある。

 もとより、捜査の誤りや再発防止策などを究明することは再審公判の本来の目的ではない。それでも佐藤裁判長は、冤罪を生んだ原因に可能な限り迫ろうとする姿勢を見せた。

 再審開始の決め手になったDNA再鑑定人の証人尋問を決めたほか、弁護側鑑定人のDNA再鑑定に反論するなどした警察庁科学警察研究所の所長に対する証人尋問も実現する見通しだ。これで当時のDNA鑑定がいかに未熟なものであったかの事実解明は図られるに違いない。

 今後の焦点は、冤罪を生んだもう一つの原因である取り調べの実態解明が進むかどうかだ。地裁には、菅家さんの取り調べ録音テープを法廷で検証し、取調官だった元検事の証人尋問を認めるよう求めたい。

 日本世論調査会の調査では、回答者の7割が取り調べの全過程を録画・録音する「可視化」を必要とした。新たな冤罪被害者を生み出さないためにも、全過程の「可視化」実現を急ぎたい。

 再審公判が誤判原因を究明する場として位置付けられていないのであれば、真相解明のための検証制度の創設も検討すべきだ。

徳島新聞社