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社説
10月30日付  時効見直し諮問  問題点 見据えた議論を  
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 千葉景子法相は、殺人など重大犯罪の公訴時効制度を改める必要があるとして、見直し案の検討を政府の法制審議会に諮問した。

 公訴時効は、犯罪行為から一定期間がたてば容疑者が見つかったとしても公訴の提起(起訴)を認めない制度である。

 法制審は今後、部会を設置して時効制度見直しの具体的な在り方を検討し、刑事訴訟法などの改正に向けた要綱を作成する。

 見直し後の法制度を、捜査中の事件にさかのぼって適用するかどうかも検討する。

 理不尽な犯罪で被害者や遺族が受けた苦しみの深さを思えば、制度の見直しは急務であり、十分に理解できる。

 ただ、公正な裁判の維持や刑罰の在り方と密接に絡む難しい問題である。刑事司法の根幹にかかわる制度改革であり、法曹関係者を中心に慎重論も根強い。法制審には国民が納得のいく答申を求めたい。

 法制審は「時効廃止」のほか、「時効の期間延長」「犯人のDNA情報で氏名不詳のまま起訴」「検察官の請求で時効停止(延長)」の4案を軸に議論する見通しだ。

 時効制度の見直しをめぐっては、法務省の勉強会が7月に「殺人罪など法定刑の重い罪は時効を廃止し、それ以外は時効期間を延長する方向で見直すのが相当」とする最終報告書をまとめている。

 一方、民主党には「(時効廃止ではなく)一時中断や大幅延長で対応すべき」との意見があり、党の政策集でも「(重大犯罪については)検察官の請求により裁判所が時効の中断を認める制度を検討する」との方針を示していた。

 このため千葉法相は、法務省の報告書を「参考資料」にとどめ、法制審に白紙の状態で幅広い議論をするよう求めた。

 報告書の通り重大犯罪の時効が撤廃されれば、刑事司法制度は大転換することになる。法相の「白紙」諮問は、制度見直しに際して問題点をしっかりと詰めながら議論を深めていく契機になるだろう。その意味では政権交代の「効用」と言えなくもない。

 時効制度は、犯罪被害者の立場を重視する考え方が強まる中で、その存在理由が問われてきた。DNA鑑定などの科学捜査の急速な進歩も、見直し論議の背景にある。

 2005年1月施行の改正刑事訴訟法で、死刑に当たる罪の時効が15年から25年に大幅延長されるなどしたが、被害者団体などは「逃げ得を許すのは正義に反する」として時効撤廃を訴えてきた。

 英国などではごく軽微な犯罪を除いて時効がなく、国際的には生命を奪う犯罪の時効を廃止しても違和感はないようだ。重大犯罪の抑止効果も期待できよう。

 しかし、時効廃止にはクリアすべき課題が多い。まず時間の経過とともに散逸する証拠品をどのように管理していくか。捜査が長期化することで人的・財政的負担も膨大なものになるだろう。アリバイが証明できなくなるなどで冤罪(えんざい)が生まれる危険性も高まっていくはずだ。こうした問題点を一つ一つ丁寧に議論してもらいたい。

徳島新聞社