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社説
5月4日付  鳴門のコウノトリ  餌場広げ共生目指そう  
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 国の特別天然記念物コウノトリが鳴門市大麻町の電柱に巣を作り、定着してから1年になる。

 野生のコウノトリが居着いたのは兵庫県北部の但馬地方とその周辺を除けば、鳴門市だけだ。但馬に次ぐ第2の「コウノトリの里」になってほしい。

 この1年を振り返ると、試練もあった。昨年5月と今年1月に強風で巣が飛ばされ、4月には雌雄が仲たがいし、雌が巣に帰って来ず、今は雄しかいない。

 今春は、待望の産卵があったが、ふ化しなかった。1971年に国内のコウノトリが絶滅して以降、野外での産卵は、但馬以外では初めてだっただけに残念でならない。

 ただ、産卵に至ったのは、コウノトリを地域の宝として育んでいこうという地元の熱い思いがあったからだ。

 昨年5月に官民がコウノトリ定着推進連絡協議会を設置。但馬の豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園の助言を受けながら、餌場の整備や見物人のマナー対策に取り組んでいる。

 豊岡市では65年から人工飼育を始め、89年にひなが誕生した。以来、毎年ひながかえり、野外でも順調にふ化している。大麻町でのひな誕生には、同公園のノウハウが不可欠だ。さらに連携を強めていきたい。

 大麻町の雌雄は但馬からやってきた。150キロも離れた同町に定着したのは、レンコン畑などが広がり、餌となるドジョウやカエルが豊富だったからだ。

 コウノトリが絶滅したのは農薬などで環境が悪化し、餌が減少したためとされる。生態系の頂点に立つコウノトリが居着くのは、豊かな自然が残っている証しでもある。

 そうした環境を生かし、豊岡市では、無農薬・減農薬で栽培する「コウノトリ育む農法」による米が2003年から作られている。高値ながら各地から購入希望があり、栽培面積は0・7ヘクタールから300ヘクタール以上に増えている。

 鳴門市のレンコン農家も、農薬と化学肥料を減らした栽培に力を入れ始めた。コウノトリを安全安心のシンボルに掲げてレンコンのブランド化を進め、地域振興につなげる好機だ。

 課題は、餌場を拡大することである。

 雌が巣を出ていったのは、捕食に出掛けた際に餌を見つけるのに時間を要し、なかなか巣に戻らなかったことに、雄が機嫌を損ねて雌を近寄らせなくなったのが一因と考えられる。近くに餌が豊富にあれば、雌が家出することはなかったのかもしれない。餌場が広がらないと、定着するコウノトリは増えないだろう。

 協議会は、休耕田などに水を張って餌になる水生動物を増やしていくビオトープづくりに取り組んでいる。これを加速させる必要がある。

 コウノトリと人が共生する地域づくりを、住民と行政が一体で進めてもらいたい。

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