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社説
3月18日付  原発避難者勝訴  国と東電の責任は重い  
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 巨大津波の予見は可能で、事故は防げた-。「国の賠償責任を認める」「一部勝訴」と書かれた垂れ幕を、東京電力福島第1原発事故の避難者はどんな思いで見ただろう。

 福島県から群馬県などに避難した137人が、国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁はきのう、双方の賠償責任を認め、うち62人に計3855万円の支払いを命じた。

 原告側弁護団は「原発の津波対策を巡る訴訟で国と東電の過失が認められたのは初めて」とした。

 画期的な判決といえる。東日本大震災から6年が経過した今も、原発事故の責任の所在は曖昧なままだ。国と東電は、今回の判断を重く受け止めなければならない。

 原告は避難指示区域に住んでいた76人と区域外からの自主避難者ら61人である。「生活基盤を失い、慣れない土地で精神的苦痛を受けた」として1人当たり1100万円の慰謝料などを求めていた。

 裁判では、国と東電の過失の有無や、国の指針に基づく東電の賠償水準の妥当性が焦点となった。

 最大の争点は、巨大津波の襲来を予測できたかどうかである。

 政府の地震調査研究推進本部は「福島沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード(M)8級の津波地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」との長期評価を2002年7月にまとめていた。

 判決は、その数カ月後には巨大津波の予見が可能だったとした。東電が配電盤を高台に設置するなどの対策を取っていれば事故は発生しなかったと指摘した。

 国については、規制権限に基づいて、東電に対策を取らせるべきだったのに怠ったとした。

 国と東電は、長期評価について「専門家の間でも異論があり、科学的知見が確立していなかった」とし、巨大津波の予見可能性を否定。対策を取っていても事故は防げなかったと主張していた。

 判決では、賠償が認められたのは62人で、1人当たり7万~350万円だった。

 地裁は、東電の安全に対する姿勢を厳しく批判した。安全よりも経済的合理性を優先させたと評されてもやむ得ないような対応だったとし「特に非難に値し、慰謝料増額の要素とすべきだ」と断じた。

 原発事故の避難者らによる集団訴訟は、少なくとも20地裁・支部で約30件に上る。多くは国と東電の過失を追及し、慰謝料を求める内容だという。

 年内には数件の判決が言い渡される見通しだが、今回の判決はその先駆けとなるものであり、影響を与えよう。

 原発の再稼働を巡って、国と電力会社は積極的な姿勢を続けている。

 福島県には避難指示が出たままの地域が残る。戻りたいのに戻れない、帰りたいのに帰れない人たちの思いに応えていかなければならない。

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