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社説
5月20日付  共謀罪採決強行  国民の疑問は置き去りか  
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 不安を抱く国民を無視した採決に、怒りを覚える。

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院法務委員会で、自民、公明の与党などによる賛成多数で可決された。

 与党は、審議時間が目安とする30時間を超えたことを採決の理由に挙げたが、政府は法案に対する疑問に十分答えてこなかった。時間が積み上がれば議論を打ち切るというのでは、国会の役割を放棄したと言わざるを得ない。

 与党は来週の本会議で衆院通過を図る意向だが、強引なやり方は断じて許されない。

 法案は、適用対象を組織的犯罪集団と規定した。その上で、2人以上の構成員が犯罪を計画し、少なくとも1人が下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員を処罰するというものだ。

 集団の定義や何が準備行為に当たるのかが曖昧で、一般の市民も捜査対象になりかねないとの懸念が強い。

 そうした危険性とともに、浮き彫りになってきたのは、法案の必要性への疑問だ。

 政府が前面に掲げるのはテロ対策である。法案が成立しなければ、国際組織犯罪防止条約を締結できないという。

 しかし、この条約の狙いはテロ防止ではない。マフィアを念頭に、「金銭的利益その他の物質的利益」を目的とする組織的犯罪集団が、資金洗浄などを行うのを防ぐのが主眼である。

 2000年の国連総会で条約が採択された際、付属書の「対象犯罪リスト」にテロを加えることに、日本を含む各国が反対した経緯もある。

 そもそも日本は、航空機不法奪取防止条約など、テロ対策の主要13条約を既に締結している。内乱や爆発物取締罰則などには共謀罪や同趣旨の陰謀罪が定められており、国内法も整備済みだ。

 国際組織犯罪防止条約を締結しなければテロを防げないという主張は当たらない。

 政府は「化学薬品による大量殺人」や「飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させる」といったケースを想定し、法案成立が必要と訴えている。

 だが、それらに対しては、サリン等人身被害防止法やハイジャック防止法の予備罪が設けられている。

 もとより、テロ対策に「これで大丈夫」ということはない。足りない点があれば、人権に十分に配慮しながら、必要な範囲で個別に立法を検討すべきである。

 国際組織犯罪防止条約も、現状の法整備で締結できるというのが多くの専門家の見方だが、不十分というなら補う手当てをすればいい。

 法案の対象犯罪は277に上り、保安林区域内の森林窃盗などテロ組織との関連が不明のものが多数含まれている。テロ対策を名目に、監視の網を広げる意図があるとすれば到底看過できない。

 審議を通じて不安がますます強まった。数を頼みに衆院を通過させるべきではない。

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