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社説
5月24日付  「共謀罪」衆院通過   数の力で押し切るのか  
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 問題の多い法案をこのまま成立させてはならない。
 
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が、衆院本会議で自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。
 
 審議の場は参院に移るが、法案への疑問や国民の不安は置き去りにされたままだ。
 
 政府には、それら一つ一つに対して説明を尽くす責任がある。懸念が払拭(ふっしょく)されないなら、参院は法案を廃案にすべきである。
 
 最大の問題は、どんな組織や行為が処罰の対象となるのか曖昧で、当局の判断次第で一般の人も捜査対象になる恐れがあることだ。
 
 法案は、適用対象をテロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団と規定するが、犯罪の「常習性」や「反復継続性」の要件はなく、対象が限定されているとは言えない。
 
 政府は「正当な活動を行っていた団体でも、目的が一変した場合は対象になる」と説明した。いつ、何をもって「一変」したと判断するのかがはっきりせず、恣意(しい)的に運用される余地がある。
 
 さらに法案は、犯罪を実行しなくても構成員が2人以上で「計画」し、うち少なくとも1人が現場の下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員を処罰するとしている。
 
 準備行為と日常行為をどう区別するのか。金田勝年法相は「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、下見であれば地図やメモ帳などを持っている」と答弁したが、それで線引きできるわけがない。
 
 外見で分からなければ、内心に踏み込むことになる。憲法が保障する「内心の自由」が侵されかねず、社会が萎縮するとの声が上がるのは当然だろう。
 
 法案に対しては国連特別報告者が先週、「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」との書簡を政府に送った。菅義偉官房長官は「恣意的な運用がなされることは全くない」と反論したが、将来の政権が身勝手に運用しないという保証はない。
 
 1925年に公布され、その後、思想・言論弾圧に利用された治安維持法も立法時、政府は「善良な国民」は対象にならないと説明していた。拡大解釈を許したのは、やはり適用対象の定義が明確でなかったためだ。
 
 政府、与党は衆院の法務委員会で十分に審議したと胸を張るが、共同通信社の世論調査では、政府の説明が十分だと思わないとする回答が77%に達した。自民、公明両党の支持層ですら、約7割が不十分だと答えている。
 
 そもそも、テロ対策のためだという政府の主張には無理がある。どんなに安心だと強調しても、監視社会につながる可能性は否定しきれない。
 
 参院は衆院のカーボンコピーではないはずだ。議論を深め、改めて問題点を明らかにしてもらいたい。

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