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社説
7月22日付  伊方原発停止却下  不安に向き合ったのか  
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 住民の不安や特異な立地条件を、どれだけ考慮したのだろうか。

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転を禁止するよう、県内の住民らが申し立てた仮処分について、松山地裁が却下する決定をした。

 新規制基準に適合しているから安全性は保たれているとの判断は、原発の危険性に懸念を抱く国民の思いとずれているのではないか。四電側の主張をほぼ追認した決定は、理解し難い。

 争点の一つは、四電が算出した原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の信用性だった。

 住民側は、南海トラフ巨大地震の震源域に位置し、国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」から約5~8キロに立地しているにもかかわらず、四電は基準地震動を過小評価していると訴えていた。

 これに対して地裁は、震源モデルや不確定要素を適切に考慮しており、問題はないとした。

 昨年の熊本地震では、中央構造線の延長線上にある断層が動き、震度7の揺れが2回起きた。鳥取中部地震では、未知の活断層が動いたとみられる。

 想定外の地震が各地で起きている。まして、巨大地震の震源域に立つ原発である。大きな揺れや津波に対応できると言われても、住民は安心できない。

 原子力規制委員会が策定した新規制基準の合理性も争点となった。

 住民側は、東京電力福島第1原発の事故原因が解明されない中、短期間で策定されたもので、安全性を確保できていないと主張。地裁は最新の知見を踏まえ、予測できる規模の自然災害を想定して安全確保を求める内容で、「不合理な点はない」とした。

 だが、福島の事故から学ぶべき教訓は、「安全神話」が最悪の事態を招いたということだ。新規制基準を稼働のお墨付きにすれば、新たな安全神話を作ることになる。

 もう一つ、大きな争点になったのが、愛媛県の避難計画の実効性である。

 伊方原発は、日本一細長いとされる佐田岬半島の付け根に立つ。事故が発生すれば、原発から先端までに住む約5千人が孤立する恐れがある。

 計画では、陸路が使えない場合は港から船で避難するとしている。しかし、津波で港が破壊されたり海が荒れたりすれば、逃げ場を失う。

 地裁は、現時点で問題はないとする一方、今後適切に見直さなければ違法になる可能性があるとした。住民の安全確保を最優先するなら、運転を止めるべきではないか。

 伊方原発を巡っては、広島、大分両地裁と山口地裁岩国支部でも運転差し止めを求める裁判が起こされ、広島地裁は3月に訴えを退けた。

 全国でも一部を除いて却下が続いているが、司法は住民の不安を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。四電も安全対策に一層力を入れなければならない。

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