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社説
8月28日付  水俣条約発効  経験生かし水銀規制を  
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 有害金属の水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」が発効した。
 
 水銀は、今も途上国を中心に金の採掘や触媒などに使われ、健康被害が起きている。条約の発効により、鉱山での産出から輸出入、使用、廃棄に至るまで、全ての過程を規制する取り組みが世界規模で始まる。
 
 日本は、公害の原点といわれる水俣病が起きた国である。国際社会に水銀被害の怖さを訴え、先頭に立って対策を進める必要がある。
 
 条約は前文で、水俣病を教訓に、同じ被害を将来発生させないことに言及している。
 
 そのために、水銀を含む体温計や電池などの製造、輸出入を2020年末までに原則として禁止するほか、大気や水、土壌に排出される水銀の削減を定めた。適切な保管、廃棄も求めている。
 
 13年に熊本市で開かれた国際会議で採択され、日本は昨年2月に締結。今年5月、欧州連合(EU)や加盟国が相次いで締結し、発効条件である50カ国に達した。
 
 日本は採択後、水銀環境汚染防止法や改正大気汚染防止法などの法整備を進めてきた。その中で、水銀を一定量使った製品の製造を、条約の目標より3年早い18年1月から原則禁止にする。積極的な姿勢は評価できよう。
 
 一方で、輸出への対応には不満が残る。輸出先が金の採掘に使う場合は禁じたものの、最終的な使用目的が分かるケースでは輸出を認めているからだ。
 
 輸出先で転売されれば、目的外に使われる恐れは拭えない。水俣病の悲劇を繰り返させないというなら、全面的な禁止に踏み切るべきである。
 
 輸出については、条約も全面禁止を見送った。水銀を使った金の採掘が、途上国の貧困層の収入源になっているというのが理由だ。そうした人たちへの配慮は重要だろう。
 
 それでも、生きるためとはいえ、児童を含むたくさんの人たちが劣悪な環境で働き、健康被害の危険にさらされているのを見過ごすわけにはいかない。
 
 日本は、途上国が水銀を使わない採掘法に移行できるよう、技術や資金の支援に力を注ぐことが大事だ。
 
 条約は発効したが、水俣病による苦しみが今も続いているのを忘れてはならない。
 
 9月にスイスで開かれる第1回締約国会議には、胎児性患者の坂本しのぶさんが参加し、「水俣病は終わっていない」と被害の実態を訴える。
 
 公害病の公式認定から61年が過ぎたが、1500人以上の未認定患者らが国や熊本、鹿児島両県、原因企業チッソに認定や損害賠償を求め、裁判で争っている。
 
 被害が拡大したのは、国の対応が遅れたのが要因だ。政府には、水俣病の教訓を世界に発信する責務がある。
 
 そのためにも患者らと真摯(しんし)に向き合い、早期に全面解決を図らなければならない。

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