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社説
8月31日付  箱廻し地域文化賞  徳島の誇りを次世代に  
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 徳島の豊かな人形芝居文化の一つであり、一人で木偶を操り、正月の門付けや大道芸を行う「箱廻(はこまわ)し」に、スポットライトが当たった。

 阿波木偶箱まわし保存会が、「第39回サントリー地域文化賞」に選ばれた。「人形操りの芸だけではなく、正月を寿(ことほ)ぎ、幸せを祈る伝統行事を次代に引き継いだ」と高く評価された。

 消滅寸前だった箱廻しの技術を継承し、県民に愛される伝統芸能に発展させた功績は大きい。

 地域文化賞は、昨年も、鳴門「第九」を歌う会が受賞している。地域文化の向上に貢献した本県の団体が、2年連続で認められた。全国に誇れる快挙である。

 保存会の結成は22年前にさかのぼる。有志を募っての出発だった。しかし、その10年以上も前から、前代表の辻本一英さんらの手で、お年寄りからの聞き取りや、箱廻し芸人が訪れた場所の調査は地道に続けられていた。途絶えさせまいと、粘り強く取り組んできた関係者の熱意に、敬意を払いたい。

 徳島は人形浄瑠璃が盛んな土地である。人形座が隆盛を誇った明治期には、200人ほど箱廻し芸人が県内にいたという。人形を入れた木箱を担いで県内外を歩き、路傍で、人気外題の「傾城阿波の鳴門」や「絵本太功記」などを一人遣いで演じた。その一方で正月儀礼も担い、「三番叟(さんばそう)まわし」や「えびす舞」を操って家々に福を届けた。

 しかし、娯楽の多様化や社会の大きな変化を受けて、先細りとなる。保存会が息を吹き込まなければ、滅びてしまう運命だっただろう。

 1999年から3年間、県西部に、ただ一人残っていた男性の芸人に、半ば強引に弟子入りして技を受け継ぎ、2002年からは保存会による門付けをスタートさせた。現在では、元日から旧正月までの間に千軒を回る。徳島ならではの祝福芸を見事に復活させたといっていい。

 箱廻しは、被差別部落の人たちが支えてきた芸能であり、差別の苦しみの中で培われてきたことも知っておきたい。時代が豊かになるにつれ、芸人の家であったことを子どもに隠し、人形を廃棄するなどしたことも、芸の衰退に拍車をかけた。

 部落の芸能をなくしてしまうことは、部落に生きていた人の証しを消すことにもなる。素晴らしい人形文化を、県民の宝として大切にしていかなければならない。

 門付けで行う「三番叟まわし」は県無形民俗文化財、最後の芸人から譲り受けた道具一式は国の登録有形民俗文化財になり、その価値はますます高まっている。

 保存会が、後継者育成のために、子ども体験教室を開催していることも心強い。

 新年には、邪気を払い、福を運んでくれる人形を家族総出で迎える。人形の力を信じる豊かな精神文化があったことを再認識したい。

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